校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

1月9日 中・高等科 新年の祈り

2020.01.15

中・高等科はソフィア・バラホール改修中のため、放送により新年の祈りを行いました。校内には活気のある静寂がみなぎりました。

~~生徒への話~~

 新年明けましておめでとうございます。良い冬休みだったことと思います。

 たくさんのクリスマスカードと年賀状をいただきました。ありがとうございました。お返事しませんでしたが、大切に受け取り、皆さんの昨年の学びや、今年に向けての決意を読ませていただきました。心に残ったものがありました。たとえば、「お互いの間で意見が分かれ、ぶつかったときに、話し合って、結果を残す体験ができたこと」を書いてくださった方、「周りとの関わりが深まり、ものごとを深く知りたいと思うようにもなり、机上の学習から実践への一歩を踏み出した」と感じている方、「昨年は台風でみこころ祭が1日だけになったために準備したことが実現できなかったものの、そこから学びを得て、良い体験をした」と感じることができた方、「困難を困難と思わず、成長のきっかけと捉えることができた」方、このような方々の経験は大切です。また、「自ら行動していくと、たくさんの出会いを得ることができ、様々な方から話を聞くことができたり、感謝されたりなど、つながりが広がった」と感じている方もありました。そして、「自分の経験を伝えることの大切さを感じ、伝える難しさも味わいながら、共有することの喜びも感じることができた」という方もありました。このようなことばも力強く感じ、多くの皆さんが自分らしい学びを深める経験をできたことを知って、とてもうれしく思いました。そして、多くの皆さんが「自分だけのことにとどまらず、周りのことも考え、広くものごとを視野にいれ、行動していこう」と考えていることも読み取ることができました。中でも、「他人任せにせず、自分から考えて発信すること」、「自分で判断し、行動することを目指す」、「リスクをとることを恐れず、粘り強く取り組むこと」など、「自分らしくありながら自分も周りも活かす」という考え方を目指そうとしている方々を見つけることができたのも頼もしいことと感じます。「迎合せず、各がしっかり意見をもって、調和する共同体」を目指したいという考えも見つけました。ひとり一人が大切にされ、尊重されることは、今の日本の社会、世界にとても重要だと感じます。

 お正月の新聞には、各紙から力を入れた新年のメッセージが発せられます。朝日新聞には、ブレイディみか子と生物学者の福岡伸一の対談が掲載されました。ブレイディみか子が昨年出された「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」という本は大評判となり、昨年の中等科クリスマス・ウィッシングの劇のインスピレーションともなりました。多様性について考えさせられる、とてもおもしろい本でした。まだ読んでいない人にはお薦めします。イギリスで中学生が経験する、多様な仲間との生活の難しさと深さについて書かれています。その本の中に、sympathyとempathyという2つの単語が出てきます。Sympathyもempathyも辞書を引いてみると、「共感する」という意味であると書かれています。しかし、2つの単語の意味するところは異なるのだとブレイディみか子は言っています。Sympathyは、誰かを見て「かわいそう」という気持ちをもつような、気持ちや感情の動きであり、一方、empathyは誰かを見て、どうしてなのだろうか、何を考えているのか、と相手の気持ちや経験を理解しようとする能力のことと言っています。Sympathyは表面的にとらえること、empathyはもう一歩踏み込んで他者と関わろうとすること、と言ってもいいかもしれません。ブレイディみか子と福岡伸一は日本において多様性を生きる難しさにふれながら、「誰も否定されないこと」の大切さについて語っています。Sympathyとempathyについて皆さんはどう感じるでしょうか。辞書をまずひいてみてから、よく考えてみてください。私の人との関わり方はどちらの言葉に近いだろうか、そして、より望ましいのはどちらだろうか。

 朝日新聞にはもう一つ気になる記事がありました。「2020どう生きる」という特集でした。その中では「~~しない」という否定形の中に、生きる上での良い意味をみつけようとしていました。例えば、まわりと合わせない、つながらない、急がない、背負わない、競わない、などのことです。ひとり一人が大切にされ、誰も否定されないために、今の5つの「~~しない」ということは大事なことかもしれません。

 私たちが本当にひとり一人を大切にし、自分らしくいるためには、敢えて、自分を周りと合わせない、無理につながらない、周りのペースに合わせ過ぎて急がない、自分らしくないものを背負わない、人と比べて競わないなどのことを心にとめておく必要がありそうです。

 今日の聖書の朗読箇所はルカによる福音書の4章、イエスの宣教の始めと言われる場面です。イエスが人々に向けて、天の父の教えを宣べ始めます。そこでは、神の恵みがどのような人々に注がれているか示されています。それは、貧しい人、捕らわれている人、病に苦しむ人、圧迫されている人など、これらの弱い立場の人々、社会の片隅に追いやられ、忘れられている人々です。価値がないと思われている人々も含まれていることでしょう。それらの人々が神様に大事にされているのだ、とイエスは大胆に宣べていきます。これらの人々が活かされることが、神様の求めていることであり、私たちが人として、関わり、働きかけるべき人々であるとイエスは教えてくれます。そして、イエスはこれらの人々を自分たちの周りにみつけるように、とも教えているでしょう。今日から始まる学校生活で、まず自分の周りの仲間達とどのように関わるか、私たちは問われています。ひとり一人、自分も友だちも、その人らしさを大切にする関わりを作っていきましょう。そして、それが次第に広がって、世界の平和へと向かってほしいと思います。

 教皇フランシスコは1月1日の世界平和の日のメッセージで、世界は平和の作り手、職人を求めているとしています。言葉だけでなく、実行を求めるということです。職人ですから、地道な仕事をします。しかし、それが平和を作る力であるとしています。私たちが平和を作る職人となっていきましょう。

 ソフィア・バラホールの改修工事が進められてきました。外側の囲いが外され、工事の終了も近づいています。皆で楽しみにしたいと思います。寒い中、働いてくださる方々にも感謝いたしましょう。

 1月には韓国からソウル聖心生と、シスターたちの学校訪問があります。楽しみに迎え、日本と韓国のよい架け橋をつくるきっかけとしたいと思います。また、台湾とメキシコからも短期留学生を迎えますので、それも楽しみにいたしましょう。

 1月からの学校生活は学年末の締めくくりの日々です。毎日を大切にしてください。それぞれが自分の課題にまっすぐに向き合うことを願っています。2月には、11年生以下の皆さんには錬成会があります。自分を振り返る機会としてください。12年生は卒業を間近にしています。残された日々、大切に過ごしてください。そして、受験生の方々は実力が発揮できるよう祈っています。

 皆さんがそれぞれ1月からの学校生活を充実して過ごせるよう神様の恵みを祈ります。

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