校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

サードステージ朝礼  古典に親しむすてきな本:英語版源氏物語の新日本語訳 1月25日

2018.01.27

この日の朝礼では、昨年の12月に出版された1冊の本を紹介しました。毬矢まりえ・森山恵姉妹訳による、アーサー・ウェイリー訳英語版源氏物語の新現代日本語訳第一巻です。

セカンドステージでは、1月17日に百人一首大会が行われました。よく勉強してきた人は、5年生でもさっと札をとっていました。その句の内容の深みはまだ理解しきれていないかもしれませんが、大会は百人一首という古典に親しむ一つの方法でした。古典は色々な形で親しまれ、愛され続けます。国や文化を超えて、愛されるものです。源氏物語もそうです。

アーサー・ウェイリーはイギリスで1925年に源氏物語の英語訳の最初の一巻を出版しています。100年ほど前のことになります。出版直後から高い評価を得て、多くの文学者が魅了されたということです。ドナルド・キーンもこの訳に出会ったことが来日のきっかけになったと言われています。この名訳に、2人の女性が新たな翻訳を試み、出版しました。姉はフランス文学を学び、俳人となり、妹は英文学を学び、詩人として活動されているという文学姉妹です。

英文からの訳として、日本語であっても、原文とは異なる魅力があります。ウェイリーというイギリス人が読み解き、英語で表現した物語を、また日本語でその解釈の世界を味わう。独特の古典の楽しみ方です。原文では「いづれの御時にか女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に・・・」とあるところ、この新訳では「いつの時代のことでしたか、あるエンペラーの宮廷での物語でございます。」と書かれています。装いの表現も、ドレス、ガウン、サッシュ、スカート、チュニック、袴はパンツ、指貫はバギーというように、英訳を活かしたカタカナの言葉が用いられ、源氏物語の世界に全く新しい光をあててくれるかのようです。

このご姉妹は子どものときにご両親から百人一首を与えられ、それを覚えて遊んだことが古典に親しむきっかけであったことが訳者あと書きに書かれています。セカンドステージ生たちが百人一首大会を楽しんだことも、古典の世界への扉となったことでしょう。生徒たちがこの新訳により、古典の新たな魅力を発見してくれることを期待しています。

クリムトの絵を用いた斬新な装丁も、源氏物語に新しい魅力を添えています。

毬矢まりえ・森山恵姉妹訳 「源氏物語」① A.ウェイリー版 左右社 2017年

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