校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

感ずべき御母の祝日 

2018.10.25

10月20日の「感ずべき御母」の祝日にあたり、各ステージの朝礼で祈りを捧げました。「感ずべき御母」の絵はどちらの聖心でも大切にされている聖母マリアの絵です。聖心の教育の方針「魂・知性・実行力」を百合の花、本、糸紬の3つのシンボルで表しています。このピンク色の衣服に彩られた若々しいマリアは児童・生徒に親しみ深いものです。原画はイタリアのローマ、かつて聖心の学校であったトリニタ・ディ・モンティの修道院でポーリーヌ・ペルドゥローによって1840年代に描かれました。ポーリーヌは当時、聖心会への入会を志してトリニタの聖心で生活していた若い女性でした。後に聖心会員となってから聖マグダレナ・ソフィアと共に生活し、創立者の日常のエピソードを回想録「大修道院の余暇」に書き綴っています。この「感ずべき御母」を描いたころのことも書かれています。

ポーリーヌによると、絵を描いている間、多くのシスターたちが関心をもって見守り、生徒たちの中には作業のアシスタントを務めた者もいました。絵を見た生徒たちは、他のマリア様と違って自分たちと同じ年齢だと喜んでいました。その絵は生徒が勝手に行かれない場所にあったので、生徒たちは絵を見に行くためにしばしば許可を願ったこと、絵のある廊下の近くに生活していた小学生の寄宿生たちがとても親しみをもっていたこと、多くのシスターたちが通りすがりにこの絵を見ると祈りたくなると感じて短い祈りやロザリオの祈りを捧げていたことなど、多くの人がこの絵に惹きつけられたと書かれています。聖マグダレナ・ソフィアもこの絵を愛した一人でした。この絵を見ると、神に自分の一生を捧げようと誓った若い頃について聖母は語りかけると語っています。

この絵を見た多くの人が祈りに招かれたということを、改めて今年の祝日に生徒たちと共に考えました。この絵には、聖心で大切にする3つのことがマリアの周囲に置かれたシンボルで描かれ、活動そのものは描かれていません。マリアは神殿と言われる広い場所で椅子に腰かけ、うつむくように目を伏せて思いをこらし、思い巡らす様子をしています。静けさと祈りの雰囲気に満ちながら、マリアの祈りそのもの姿が描かれているのではありません。神殿の中に一人置かれたマリアの姿そのものが見る人の心に強い印象を与えます。この絵はマリアの静謐さの中に、日常の生活において神さまを感じることの大切さを表しているかのようです。

感ずべき御母に接して祈りへと招かれた人たちは、聖心で大切にされていることに新たに気づいたのでしょう。この絵を見た多くの人が、通りすがりに立ち止まって、日常性を一時中断して祈りを捧げました。聖心らしい、聖心で大事な自分たちならではのものは、普通の生活の様々な活動を祈りの姿勢が貫いていること、祈りによって様々な活動がまとめられるということをこの絵は気づかせてくれる・・・感ずべき御母はこうして人々を惹きつけていったのでしょう。

この絵を通して、私たちは「目に見えないものの大切さ」を思い起こすよう促されています。それはまさに、日頃の普通の生活の中で、目に見えるものの奥にある大事なものに気づくようにという招きです。祈りの姿勢が、気づきの感性を磨いていきます。天使のお告げを受けてイエスの母となるマリアも、少女のときに祈りの姿勢を深く自分のものとしていたからこそ、神からの思いがけない呼びかけに気づき、その人生の重大な瞬間に相応しく応えることができたのです。聖マグダレナ・ソフィアは自分も一生を決める決断をした若い頃を思い出しながら、児童や生徒がマリアに倣って目に見えないものに気づいていく、自分の心に深く聴く姿勢を身につけてほしいと願ったに違いありません。

感ずべき御母の絵は校内の様々な場所に飾られています。特にセカンドステージ生はブラウジングルームを通りながら、校内で一番大きな感ずべき御母の絵を毎日目にしています。かつてのシスターや生徒のように絵の前を通るたびに立ち止まって祈ることをしないまでも、祈りの心を思い出してほしいものです。そして、忙しい学校生活の中でも、朝礼や終礼で短くても祈りを捧げる時間に、その祈りの一つ一つの祈りを大事にして、本当に大事なときに気づける心を自らのうちに育ててほしいものと願っています。

ポーリーヌ・ペルドゥロー「大修道院の余暇」 訳:JASHボランティア翻訳グループ 2018年

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