校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

7月第1週の朝礼 SDGs私のできること ストローはやめる?  初等科での国谷裕子さんの保護者講演会から

2018.07.09

暑くなると冷たい飲み物がおいしくなります。冷たい飲み物にはストローがつきもの。6月30日に初等科では保護者のための講演会を行い、国谷裕子さんをお招きしてSDGsについて話していただきました。その講演をうけて、各ステージの朝礼で児童・生徒と共にSDGsについて考え、プラスティックの使い捨てストローについても取り上げました。

国谷裕子さんはNHKで「クローズアップ現代」のキャスターを長く務められ、社会の様々な問題を鋭い視点で取り上げられました。現在はジャーナリストとしてご活躍で、SDGsについても国連広報センターのキャンペーン動画に登場されたり、昨秋は朝日新聞主催の朝日地球会議2017において国連副事務総長アミーナ・モハメッド氏と対談されたりなど活動を深めていらっしゃいます。そのような国谷裕子さんに初等科の保護者に向けてSDGsについて講演していただきました。

SDGsについては、17の課題に先立つ3つの重要な点があるということです。1つ目は環境破壊についての強い意識。地球環境はもう限界に来ているという意識です。2つ目は誰一人取り残さないというコミットメント。これは、自分たちだけ都合が良ければ良いと言う考え方ではなく、どこでも、誰でも、世界全体でという考え方のことです。3つ目は今、行動しないと間に合わないという危機感です。これらの3つの点を考えながら、SDGsの17の課題に多面的に取り組む必要があります。

暑い日に冷たい飲みものを飲むとき、家庭ではコップについで飲むでしょうか。外出先で何か飲みものを買うときはどうでしょうか。店頭で注文すると、プラスティックの容器に入って、ストローがついてきます。ふたが付いていることもあります。プラスティック容器は軽くて取り扱いやすく、値段も安く、使い終わったら簡単に捨てることができます。とても便利です。しかし、一方で自然に分解するものではないので、回収されないでゴミとして川や海に流れていくと、砂のように細かくなっていき、魚や生物の体内に入っていきます。消化されるものではありませんが、プラスティックの細片には水中の有毒成分が付着しやすいと言われ、それにより魚や生物が汚染されていきます。そして、その魚や生物を他の生物が食べ、人間が食べて、プラスティックによる汚染が広がります。国谷さんはこのようなプラスティック汚染の深刻さについて話してくださいました。使い捨ての容器は洗えばリサイクルすることもできますが、ストローのように小さなものはリサイクルが非常にむずかしいということです。魚や生物は自分で意見を表明することができませんから、人間が気づいて対応するしかありません。

ところがこの講演の翌日、7月1日にアメリカのシアトル市が使い捨てのプラスティックストロー、スプーンなどを使用しないことを条例化したことが報道されました。シアトル市では、リサイクルできる素材か生分解性のもの以外は使用しないということです。プラスティックの使い捨てストローを使用しないということは、これまでより不便になり、価格も高くなる可能性を引き受けるということです。しかし、未来のこと、地球全体のことを考え、ほんとうに大事なことを考えてこの選択に至ったということでしょう。シアトルにはスターバックスの本社があります。そのような都市がプラスティック使い捨てストローの不使用を決めたことは大きな意味があります。

このプラスティックの使い捨てストローの例から、人間だけが便利でも良くない、いくつかの国だけに都合が良くてもふさわしくない、今だけ便利でも良くない、値段が安くてもそれだけでは良くない、などの点が見えてきます。それでは、大事なことは何でしょうか。どこでも、いつでも、みんなに、ずっと良いことを探すことが、SDGsで重要なことになります。

この講演会の日に中高等科生は7月13日に予定している合唱コンクールの練習が重なっている学年が多く、残念ながら参加できた生徒はわずかでした。しかし、参加できた中高等科生の中から質問が出されました。プラスティックの使い捨てストローをやめて紙のストローにしたら森林破壊につながるのではないか、中高生としてSDGsでできることは何かという2つでした。紙のストローを使用するなら、その製品がどのように製造されたものなのか調べたり、トレーサビリティを追ってみたりしたらどうだろうか、中高生でもローカルな問題について調査したり、課題解決に向けて活動したりしてみることはできるのではないか、と答えてくださいました。

プラスティックの使い捨てストローの問題は、SDGsでは少なくとも、目標6安全な水とトイレ、目標14海の豊かさを守る、目標12作る責任・使う責任、目標11住み続けられる街づくり、目標3すべての人の健康、目標9新しいものづくりを考える、の6つに関わります。一つの問題がいろいろな目標に関わっていることがSDGsの特色であることがわかります。これから家で何か冷たいものを飲むとき、外出先で何か飲みものを買うとき、どのような容器で、ストローを使うかどうか、考えながら生活することがSDGsの実践につながります。

最近の新聞には、未販売のままで廃棄される何万着もの衣料品があることが報道され、衣料品が安く買える社会についての特集記事もありました。目標12の意識をもった賢明な消費者として、ストローについてだけでなく、衣服の買い物のときにも考えてみる点はたくさんありそうです。

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