校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

3月31日おもしろい本を読みましょう(24)遠藤寛子「きりしたん算用記」

2020.03.31

 3月の最後の日となりました。皆さんはどのように過ごしていますか?今日も曇り空の肌寒い日でした。桜はその中でひっそりと咲いています。満開です。コロナウィルス感染流行の勢いはとどまるところを知らないかのようです。とても心配です。祈りながら過ごしましょう。

 1年生から手紙をもらいました。「カエルのエルタ」を読んで、自分にもエルタがいたら楽しいのにと思っているそうです。ほんとうにそうです。かんた君はエルタをとても大事にして、ごはんを食べるときも、寝るときも一緒。今のように皆さんがお友だちに会えないときに、そういうだれかが一緒にいてくれたら、毎日がきっとたのしくなります。でも、エルタってほんとうのカエルかな?ほんとうはつくりものではなかったかな?だから、ほんとうは動かないし、しゃべらないはずです。不思議です。だから、「カエルのエルタ」の本はおもしろいのです。

 今日、紹介する本もセカンドステージ以上の皆さん向けです。でも、表紙の絵はとてもかわいいので、4年生くらいでも読みたいかもしれません。「きりしたん」とは、イエス・キリストを信じる人々の昔の呼び名です。この本の物語は江戸時代の始まりの頃の京都が舞台です。表紙の少女が主人公「小菊」。小菊は両親を失って、ひとりで生きていかなければなりません。物語の始めから大変なできごとに遭って、困ってしまいますが、一人の女の人に助けられます。その人がキリシタンだったのです。当時、キリスト教を信じることは禁止されていました。そして、もう一つの不思議は「算用」です。

 江戸時代には、算数・数学を「算術」「算用」などと呼んでいました。学校制度はまだありませんから、多くの子ども達は寺子屋で読み書き、そろばんを習いました。武士の家に生まれた男子はさらに勉学を進めましたが、数学や科学・技術は限られた人々のものだったでしょう。「武士の家計簿」という映画がありましたが、武士の中にも藩の会計の仕事を担う人々はそろばんにたけ、武道ではなく算術によって生きていました。武家の中でも特別な家系です。その映画の中のおばあさまは算術が趣味で、楽しみに算術の本を読んでは、問題を解いていました。女性で算術ができる人は珍しかったのです。

 この本を書いた遠藤寛子は、江戸時代や明治初期の女子の数学との関わりをいくつかの作品で描いています。数学に関心をもつ女子は数少なかったものの、そういう女子はいたのです。歴史の表には現れないそのような存在を描いて、数学好きの女子を応援しています。この本の中では、キリシタン、数学、女性、これらの3つが絡んで、読み応えのあるストーリーとなっています。キリシタンと数学には何かつながりがあるのでしょうか?

 歴史が好きな方、数学が好きな方、もちろん本が好きな方、ぜひこの本を手にとってみてください。

 遠藤寛子 「きりしたん算用記」 PHP文芸文庫

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