トップページ > Spirit of "Mikokoro" > 1月21日中高等科朝礼 自分ごととして考える アンネ・フランク写真パネル展
アンネ・フランク写真パネル展が続いています。ある学年は社会科の授業で取り扱い、生徒が書いた感想を掲示しています。初等科生の中にも見学した学年が出てきました。ナチスによるユダヤ人差別は歴史の上では過去の出来事ですが、日本の私たちと関わることがあるのでしょうか。昨年話題になった小林エリカ著「女の子たち風船爆弾をつくる」(文藝春秋社 2024年)を紹介しながら、生徒と共に考えてみました。
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アンネ・フランク写真パネル展が開かれています。皆さんはもう見に行きましたか?授業の中で見に行った学年もあるのでしょう。静かにじっくりと写真を見て、説明を読んでいる姿を目にしました。感想も掲示されていますので、読ませていただきました。写真やアンネ、アンネの父が残した言葉に皆さんが考えさせられたことが記されていました。ヒットラーとナチのユダヤ人差別の現実について、皆さんが多くのことを学び、考えたことがわかりました。これまでなんとなく漠然と知っていたことについて、しっかりした正しい理解へと進むことができたことは意味深いことです。歴史を学ぶことは、今を生きるために、未来を作るために、とても重要なことだと改めて私は感じています。
写真が語るものにも大きな力があります。私には、このユダヤ人差別の出来事について忘れられない写真があります。ナチが大きな集会を催し、行進をしている場面で、背景に大きなナチの鍵十時の旗が掲げてあり、その隣には日本の旗も掲げられているという写真です。私はずっと以前に、ユダヤ人をドイツから脱出させるために多くのビザを発給した日本人外交官杉原千畝に関する企画の一場面として、この写真を見ました。ナチについてなんと非人道的なことかと思っていたところ、日本の旗がナチと一緒に掲げられていました。これは私には大きな衝撃でした。日本が、歴史の動きの中で、ドイツ・イタリアと三国同盟を結んでいた時期があったことによるものです。日本はナチと同じ側に立っていた時代があったのです。この写真を見たことにより、私はユダヤ人虐殺を遠い他の国の出来事とは思えなくなりました。
私が読んだ一冊の本を紹介します。昨年話題になった本で、タイトルは「女の子たち風船爆弾をつくる」、作者は小林エリカです。昨年の9月に学校の図書館に入り、今までの半年足らずで5人もの貸し出しがありました。校内でも気になる本となっているということです。第二次世界大戦中、日本では爆弾をつけた気球を日本からアメリカに向けて飛ばす計画がありました。風船爆弾とはこのことです。この本では昭和10年、1932年から現代までが扱われ、小学校2年生の女の子たちが知らないうちに戦争に巻き込まれていくストーリーが描かれています。何人もの女の子たちが巻き込まれていくので、主人公として名前のある人物は出てきません。
女の子たちは成長して、千代田区の3つの女子校、雙葉学園、跡見学園、麹町高等女学校の生徒となり、戦争になって授業がなくなると、勤労奉仕として工場での仕事に駆り出され、戦争のための物資を作る仕事をします。生徒たちは、近隣ということで有楽町にあった宝塚歌劇場だった建物に集められ、与えられた仕事は和紙を糊で貼って、気球を作ることでした。まさか爆弾になるとは思っていませんでしたが、戦争中なので、何か役に立つことをしたい思いで一生懸命に働きます。その結果、自分たちの作ったもので子どもや女性が命を奪われた、ということを後になって知ります。戦後になって時間が経ってから、知らなかった事実が明らかになっていきました。
宝塚歌劇団は当時も女の子たちの憧れでした。歌劇団の少女たちは日本からの友好使節として、同盟国のドイツ・イタリアに赴いて公演を行い、好評を博し、大変な人気を得ました。しかし、後に、イタリアもドイツも負けていった現実を知ることになります。宝塚の少女たちも戦争に巻き込まれていきました。自分たちが一生懸命やったことの意味は何だったのだろうかと考えさせられることになります。
戦争中の女の子たちは知らない間に、大きなものに巻き込まれていきました。現代に生きる私たちも、色々な現実の中に生きています。知らないうちに何かに巻き込まれているということもあり得ます。自分がどのような状況の中にいるのか、いつも意識しているようにしたいものです。知る、ということを大事にしなければなりません。