校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

11月21日 詩人谷川俊太郎が亡くなって

2024.11.21

 詩人の谷川俊太郎が亡くなられました。子どものための言葉遊びに満ちた楽しい詩から、奥深く心を探る詩まで多くの作品を残されました。子どもたちと共に、2編の詩を読み、味わいました。

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 一人の日本の大切な詩人が亡くなりました。詩人というのは、詩を書く人です。谷川俊太郎という名前です。もうおじいさんで、92歳でした。若いときからたくさん詩を書きました。「鉄腕アトム」というずっと昔のテレビ漫画の主題歌の歌詞も書きました。スヌーピーの漫画の言葉を英語から日本語に訳する仕事も長い間続けていました。これまでたくさんのおもしろい詩を書いてこられましたが、もっと長生きして、もっと詩を書いてほしかったと思っている人がたくさんいます。

 たくさんの詩がありますから、皆さんの中にもこの詩人の作品を読んだことがある人がいるかもしれません。国語の教科書の中にも載っているかもしれません。今日は2つの詩を読み、皆さんと味わいたいと思います。まず、「歩くうた」です。

 「ひとは歩く  / てくてく歩く / ひとは歩く / のそのそ歩く / 人は歩く / ぶらぶら歩く / ひとは歩く / 道がなくても / ひとは歩く / 砂漠をこえて / ひとは歩く / よそ見しながら / ひとは歩く / 好きなほうへ / ひとは歩く / 今日から明日へ / ひとは歩く / 自分の足で / ひとには歩く自由がある / ひとは歩く / すたすた歩く / ひとは歩く / とぼとぼ歩く / ひとは歩く / のしのし歩く / ひとは歩く / 扉をあけて / ひとは歩く / 錠をこわして / ひとは歩く / 壁をつきぬけ / ひとは歩く / 大地を踏んで / ひとは歩く / 国境をこえて / ひとは歩く / ひとを助けて / ひとには歩く自由がある」

 次の詩は「朝のリレー」という題名です。この詩は少し難しいので、説明します。地球は大きくて丸いので、違う場所では時刻も違います。たとえば、日本で朝の8時過ぎに、ニュージーランドではもう昼の12時過ぎです。オーストラリアのシドニーでは朝10時です。カンボジアではまだ朝の6時です。このように世界では時間が少しずつずれて、世界全体で24時間になるようになっています。「朝のリレー」は、世界全体で朝がどのように起こっていくかを書いている詩です。

 「カムチャッカの若者が / きりんの夢を見ているとき / メキシコの娘は / 朝もやの中でバスを待っている / ニューヨークの少女が / ほほえみながら寝がえりをうつとき / ローマの少年は / 柱頭を染める朝陽にウインクする / この地球では / いつもどこかで朝がはじまっている / ぼくらは朝をリレーするのだ / 経度から経度へと / そうしていわば交替で地球を守る / 眠る前のひととき耳をすますと / どこか遠くで目覚時計のベルが鳴っている / それはあなたの送った朝を / 誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ」

 このような詩です。谷川俊太郎は、言葉によって表せる豊かな世界を開いてくれる詩人でした。たくさんの作品がありますから、皆さんも自分の好きな詩をみつけてください。

(「歩くうた」アムネスティ・インターナショナル日本支部のために 谷川俊太郎 詩の散歩道「どきん」理論社 1998年

 「朝のリレー」 谷川俊太郎詩選集1 集英社文庫 2005年 )

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