トップページ > Spirit of "Mikokoro" > 初等科朝礼10月23日 授業の終わりのご挨拶 昔と今
子どもたちに昔の聖心の話をすることにしたところ、なぜその変化が生じたかということも考えなければならなくなりました。子どもたちには、少し大きな難しい話にはなってしまいましたが、カトリック教会と学院の動きについても説明しました。聖心女子学院が伝統を大切に受け継ぎながらも、変化に対して開かれた姿勢を大切にしてきたことをも伝える機会となりました。
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今回は昔の聖心の話をします。どの学校にも、学校の歴史の中で、その学校に独特のことやその学校ならではのことがらがあります。その学校の特色を表すものです。しかし、その特色も変わっていくもので、変化し続けるものです。聖心でも同じです。
皆さんは授業の始めと終わりに立って、ご挨拶をしています。私が初等科生だったころも、授業の始めと終わりには、きちんと立ってご挨拶をしました。それは今と変わりません。皆さんもご挨拶しています。授業の始めには何と言いますか?「お願いいたします」です。では、授業の終わりはどうですか?「ありがとうございました」と言っています。私が初等科生のときには、授業の終わりに、「ありがとうございました」ではなく、「おそれいりました」と言うことになっていました。他の色々なときにも、「ありがとうございました」の代わりに「おそれいりました」ということになっていました。今はあまり使わない言い方です。時代劇で武士の男の人が「おそれいった」と言うかもしれません。深く心に感じた、参った、のような意味で、相手を大切にする気持ちで言う言葉です。初等科生の私も少し不思議な気持ちはしていましたが、聖心では、皆で「おそれいりました」と言うことになっていました。他のところではあまり言わない、特別な言葉だと思って大事にしていました。
ところが、3年生か4年生のときに、皆で集まっている場でシスターからお話があって、これからは「おそれいりました」とは言わず、「ありがとうございました」と言いましょうということになりました。この理由は何だったのでしょうか。おそらく、「おそれいりました」は古い言葉づかいになって、あまりに独特になってしまったので、先生方で考えて、やめることに決めたのではないでしょうか。
しかし、私には、「おそれいりました」という言葉には、ていねいな言葉としてのすてきな響き、特別な響きがあったという思い出もあります。今も、ていねいな言葉づかいをしたいという考え方は受け継いでいます。
変化と言えば、シスターたちの服装は大きく変化したものです。私が1年生から3年生の間は、シスターたちの服装は、聖マグダレナ・ソフィアと同じ姿で、長い黒いベールに顔の周りには白い飾りがあり、スカートは床まで届く長いもので、大きな黒くて長いロザリオをベルトのところに付けていらっしゃいました。それが、4年生のころからどんどん変化していきました。色は黒からグレーに変わっていきました。スカート丈も少しずつ短く、普通の長さになっていき、ワンピースのようなスタイルになっていきました。ベールも短くなって、シンプルになっていきました。そして、少しずつ私服のシスターが増えていき、私服が普通となっていきました。シスターの呼び方も、以前は、マザーバラと言うように、「マザー」という呼び方もしていましたが、あるときから「シスター」とお呼びすることに変わりました。シスターたちの外側は大きく変わりました。しかし、内側は変わるものではありません。
このようなシスターたちの変化には、世界のカトリック教会全体の動きも関係していました。1962年から1965年にローマで、第2バチカン公会議というカトリック教会の重要な会議が行われました。その会議では、カトリック教会として受け継いできた伝統も大切にしながら、今の時代に本当に大切なことを大切にするために、教会も時代に合わせて変化していくことに決めました。本当に大切なことは、神さまと共にいること、人々の中にいる神さまと共にいる、ということだと確認したのです。伝統にこだわっていると、あまりに特別に、独特になっていってしまいます。そうすると、現実の生活から離れていってしまうことにもなり、今の中にある大事なことを見失ってしまうということにもなります。カトリック教会はそうならないように考えたのです。そして、聖心会のシスターたちも、教会の動きに倣って、今の時代に何が本当に大切なことかと考えて変化していきました。それで、「おそれいりました」から「ありがとうございました」に変わり、シスターたちの服装も変わっていったのです。
私たちも、聖心として受け継いでいるよい伝統を大切にしながら、本当に大切にしなければならないものは何かと考えて、大切にしていきたいです。