校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

10月7日中高等科 後期始業式 小さなことから始める  国連の中満泉さんに学ぶ

2024.10.07

 中高等科は後期の始まりを迎えました。みこころ祭も間近に控え、生徒たちは新たな意識で学校生活に取り組もうとしています。画像は校庭で見つけた、柿の葉の落ち葉です。中満泉さんの番組は9月に2度にわたって放送されたNHKアカデミアです。

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 後期が始まります。新たな気持ちでここに集まっていることでしょう。10月になりましたから、秋の心構えで始めましょう。今年度の学校目標「私から私たちへ 対話:始める 深める 変わる」を心に進んでいきましょう。秋の深まりと共に皆さんにも豊かな実りがあることを願っています。

 今日は通知表渡しの日でもあります。先週は先生方と皆さんの成績について話し合いました。そこで、今日、皆さんには、小さな努力の積み重ねが大切と言いたいと思います。漢字と英単語にまず忍耐を持ってとり組んでください。とても基本的なことです。毎日少しずつ、着実に取り組みましょう。これは言葉の獲得、自分の使える言葉を自分のものにすることです。そして、毎日の小さな努力が皆さんの忍耐力とやり遂げる力を育てます。そこから力をつけていきましょう。もう漢字と単語の学習は大丈夫という方は、これらを土台に次に進んでください。

 今日の聖書朗読はタラントンのたとえで、有名な話です(マタイによる福音書25章)。主人からお金を預かった3人の僕たちが主人に自分たちの活動を報告します。この報告を、主人と一緒にする振り返りと考えてみましょう。一人ひとり自分の活動を振り返って、主人に話します。一人一人預かったお金の金額は異なります。稼いだ金額も異なります。始めの二人の僕の説明は簡潔ですが、すっきりして、いきいきしている感じがします。できるかぎりやってみました、という感じが伝わってきます。主人の反応はどうでしたか。主人は金額によって僕を比べてはいません。それぞれに対して「よくやった」と言って僕の働きを喜んで、努力を労っています。そして、「小さなことに忠実だった」と褒めて、信頼を大きくしています。しかし、3人目だけは咎められます。何も努力しなかったことを言い訳したからです。話の仕方も生き生きしていません。嫌な感じがします。この僕は自分に対しても、嫌な感じをもっていたのではないかと感じられます。始めから何もするつもりがなかったのでしょう。だから、預かったお金を地面に埋めてしまいました。そして、何もしなかったことを主人の人柄のせいにしています。そこで、主人は努力することをしなかったこの僕を咎めます。この僕が、望ましくない結果の原因を外に求めようとしていることは、とても残念なことです。

 神様は私たち一人一人を大切に見守ってくださる方です。私たちが一生懸命にやってみることを待っています。自分に対して言い訳することなく、頑張ってみましょう。小さな一歩に神様が共にいてくださいます。

 振り返りのときには、自分の行動についてまっすぐ見つめてください。終業式でお話ししたように、振り返りを通して、自分で納得するポイントを見つけてください。自分の納得をみつけるためには、自分に正直であることが大切です。

 振り返りはとても大切です。振り返りの力は、皆さんの実力の一部です。皆さんは、特に高等科の上級生の方は、非認知能力とかメタ認知という言葉を聞いたことがあるでしょう。これは「見えない力」とも言われて、テストなどを通して数値で表すことはできないものですが、人を動かす大きな力で、いわゆる学力とも大きく関わっています。自分をコントロールする力、やり遂げる力、忍耐力などがそれに含まれます。皆さんが取り組む振り返りは、この見えない力を育てるために必要です。振り返りを大切にしてきた聖心の生徒として、振り返りと見えない力を自分の強みとしていってください。自分をどうしたら、より良い方向に導いていかれるか、自分で取り組んでみる。そして、それを言葉で表現する。言葉を通して皆さんは自分を作って行きます。自分をよりよく表現するためにも、言葉が必要です。日本語でも、英語でもたくさんの言葉を獲得してください。

 さて、今日10月7日は今の世界にとって大きな日です。1年前の今日、パレスチナのガザで戦闘が始まってしまいました。この1年間、状況はよくなるどころか、悪化しています。世界はどうなっていくのか心配されます。国連は機能しているのかという疑問も出されています。そのような厳しい状況ですが、今回は皆さんに国連で働く一人の女性の話をいたします。中満泉という方で、国連で日本人初の女性事務次長、軍縮担当上級代表を務めています。この方が若い人たちにメッセージを送るテレビ番組が9月にありました。国連での中満さんの仕事は、軍備を縮小し、交渉によって平和な世界を作り出すことです。中満さんは、ウクライナに加えてパレスチナでも戦争状態となって、今の世界は危機的状況にある、瀬戸際に立っているという強い危機感を持っていると言っていました。国連が機能しているのかとも問われていますが、国連は今も働いていて、利害が対立する国々の中で、国連の立場を明確にして交渉を続けていると言っていました。「忖度」と言う言葉は国連にあってはならないという信念を持っています。どんなに難しい状況でも決して諦めてはいけない。方策を持って対応すれば必ず世界は変えられると言っていました。

 話を聞いていて、とても強い方だと思いました。しかし、とても穏やかな雰囲気の方で、とても厳しいと思われる話題のときにも微笑みを絶やしませんでした。若い時からトルコやボスニアヘルツェゴビナに派遣され、女性がたった一人きりの現場でも、しっかりと働いてきた方です。若い時には、緒方貞子さんが上司で、大事なことを教えられたと言っていました。それは、人間を中心におく、いのちを救うことを第一考える、生きてさえいれば人生がつながると言うことで、これは今の中満さんが大事にしていることでもあるそうです。私たちの大先輩の緒方貞子さんの教えを受け継ぐ方だと知って私は嬉しく思いました。

 中満さんはとても厳しい状況の中でも、勇気を持って生きている普通の人々に出会った経験があるそうです。いのちをかけて人を助ける、いのちの危険があっても大切な情報を国連に知らせてくれる、そのような人々に出会ってきたそうです。そのような経験によって、一人一人の努力が世界を変えていくと信じている、若い人たちにもそれを信じてほしいと言っていました。世界の危機は深刻でも、必ず変えられる、それは小さな一歩から始まると言っていました。自分のことだけでなく、身の周りの困っている人、不公平や差別に心を寄せる。自分ごととして考え、自分のできることをすることが大切だと話していました。

 一方、このようなしっかりした信念を持った人でも、時には行き詰まりを感じることもあるそうで、そのような時は困難を生き抜いた人のことを学ぶと言っていました。例えば原爆の被爆者の方々です。そのような方たちが生きてきたこと、生き抜いてきた言葉には励まされます。そして、そのような方々が世界を動かす力になることもあると感じているそうです。若い人にはそれを信じて、希望を持ってほしいと語っていました。

 自分ごととして考える、自分のいる場所でできることに身近なことから取り組むということは大事なことだと、改めて感じました。

 私たちの学校生活の日常に、まずしっかり取り組みましょう。小さなことが大きな世界に繋がります。普通の人の小さな勇気が世界を変えていくように、皆さんの今日の小さな努力が皆さんの明日を作ります。言い訳することなく、実行しましょう。

 これから高等科生徒会の選挙演説もあります。皆さんがしっかりと聞き、判断することを期待しています。みこころ祭での皆さんの活躍も期待しています。

 世界について考えるきっかけとして、毎年この時期には、朝日新聞が主催している「朝日地球未来会議」というものもあります。卒業生が朝日新聞に勤めている関係で、毎年ご案内をいただいています。高校生の参加できるものもあります。情報をお知らせするようにしますので、自分には何ができるか考える機会としてください。

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