トップページ > Spirit of "Mikokoro" > 9月26日 中高等科前期終業式 振り返りを大切に 小さいこと、弱さから始まる
中高等科は前期末試験、答案返却日を終えて、前期最終日を迎えました。この区切りのときに、振り返りの大切さを考えてみました。振り返りは、自分を方向づけていく大切な活動です。また、先週の能登半島での豪雨災害に対しては、生徒たちも意識をもっており、祈りの中にも言及し、もゆる会が今後寄付活動を行うという発表もありました。そして、生徒たちの心は早くもみこころ祭に向かっています。
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今年の9月はとても暑く、気候の不安定な夏の終わりでしたが、今週になって急に秋を感じるようになりました。能登半島では豪雨災害が発生し、お正月の地震に重ねての災害に、被災された方々のことを考えると心が痛みます。皆さんのご親戚やお知り合いは大丈夫でしょうか。皆で祈りながら、何かできることを探していきましょう。
前期末を迎え、まず、ここまで皆が色々な活動をしながら学校生活を過ごしてこられたことに感謝しましょう。先ほどの能登半島の災害や世界の情勢を考えてみると、日常生活を普通に送ることができることも、恵まれたことだということがわかります。
コロナ禍も落ち着いて、色々な活動をしてたくさん学び、今日を迎えています。皆さんは何に手応えを感じていますか?やりがいがあったことは何ですか?大変だったことはありましたか?誰かと協力してできたこと、あるいはうまくいかなかったということはありましたか?そこにはどのような対話がありましたか?私から私たちへと動くことができましたか?
一人ひとり自分の歩みを思い起こして大切にしましょう。うまくいかなかったことも必ずあるでしょう。うまくいかなかったことは思い出すのも辛いと感じるかもしれませんが、そこにこそ、皆さんの深い思いや一生懸命さがつまっているかもしれません。あるいは、もっとこうできたらよかったという思いもみつけられるかもしれません。
学習についてはどうでしょうか。2日間の答案返却日でした。やった!と思うところと、がっかり!と思うところときっとあるでしょう。答案返却は皆さんの学習の歩みの表れと考えましょう。そこには、点数もさることながら、皆さん自身の学習についての情報がたくさんつまっているでしょう。それをしっかり読み解いてください。
この時期に大切なことは振り返りです。もう終わったことだからと片付けず、振り返りをしましょう。振り返りは大切な作業です。皆さんが自分自身をしっかりと見つめ、どうしたら自分がより楽しくなれるか、前向きになれるか、自分に必要だと思うことが実行できるようになるか、自分の願っていることに近づけるか、振り返りはこのようなことをみつけていく作業です。「テストの振り返りをする」という活動もあるかもしれませんが、それも自分を見つめることです。振り返りをしたら、「本当にそうだな」と感じるところまでよく考えてみてください。書いたものとするなら、自分が書いたものを自分でよく読んでみましょう。自分で納得するかどうか確かめてください。「本当にそうだな」と気づいたことは何だったのでしょうか。そして、それに対して、どうしたら良いと思っているのでしょうか。
自分の良いところにも気づくことでしょう。そして、自分の弱いところも見えてくるでしょう。弱さに直面することは辛いものもありますが、弱さに正直になれるかどうかは大事なことです。弱さをまっすぐ見つめるところに、皆さんの本気や納得がきっとあります。
振り返りをしたら、そこから、次の一歩に出ていくことが大事です。私はどんな次の一歩をしようとしているのか、そこにどんな思いを込めているのか、自分の弱さにどのように向き合おうとしているのか。自分で自分に問いかけてください。
自分が納得していないことを書いても、次の一歩が踏み出せません。必ず何か実行して、新たなものを自分でつかみましょう。小さなことでよいので、自分が納得できることをみつけましょう。納得しているということは、本気でそう思っている、ということです。人がどう思うか、とか、普通はこう考えるだろうとか、こう書いておけばよいだろう、という問題ではありません。自分に正直に、自分にとって今大切だと思うことを見つけてください。そして、大事なことは小さなことから始まります。
一つおもしろい、考えさせられる話を聞きました。インドのご出身の司祭が、インドの話です、と言って教えてくれました。1から9の数を擬人化して考えてみます。さて、9が8のところに来て、暴力を振るって痛めつけました。どうして、と8が問うと、9は自分の方が数が大きく、力があるのだから当然だと言います。8はやられてしまいます。すると、今度は8が7のところに行って7を痛めつけ、自分の方が力があるのだから当然だと主張します。すると、今度は7が6のところに行って力の弱い方を痛めつけることが起こり、それがついには1のところまで繰り返されます。強い方が勝つ一方です。1は数として一番小さく弱いので、どうすることもできません。もう自分が痛めつける相手がいません。そこで、1はどうしたと思いますか?あきらめてしまったのでしょうか。そうではありません。1は自分より小さい0のところに行って、0を連れてきて、10になり、9より上になったのです。9から2は逆転現象が起こったので、仕返しされるかと思ってびっくりします。しかし、10はもう弱いものを痛めつけることはしなかったという話です。
小さいものにも意味がある、強いものだけが勝つのではない、弱いものが一番強くなる可能性ももっている、そのような意味を含んだ話です。弱さが強さに変わりうるという発想の転換です。私たちの弱さもそれを大切にすることによって、強いものに変わる可能性がある、そのように弱いもの、弱さを考えてみたいと思います。そして、答案返却があったこの時期では、この数はテストの点数と考えてみてもよいかもしれません。テストの点が高ければ、強いです。点が低ければ弱く、責められてしまう。この弱さ・低さをどうしたらよいのか。この数字の話は弱さに寄り添うことの大切さを教えてくれます。弱さを攻撃すれば、負けてしまいます。しかし、1と0のように弱い者同士でも寄り添って共に立てば、新しい、強いものになりえます。自分の中の弱さについて、責めるばかりでは力を失ってしまいます。弱さを弱さとして受け止め、それを支えていく。弱さを否定するのではなく、弱さがしっかりできるように、弱さも活かされるように支えていく。望ましくない数字についても、それが今後変化していくためのよいきっかけととらえたい。今後の変化に向けて、この数字が活かされるにはどうしたらよいか。自分の弱さについて、そのように振り返りの中でも、自分自身について考えることができたらよいのではないでしょうか。
今日の聖書の箇所(マタイによる福音書13章31~33)は、神の国は小さなものから始まると教えています。ほんの小さな種から大きな木が育つ、ほんの少しのパン種が大きなパンを作るもとになる、このたとえをもって、神さまが共にいてくださる力の大きさを伝えています。それは小さなところから始まります。
これを私たちの振り返りに活かし、これからの歩みにも活かしていきましょう。大事なことは小さなことから始まります。振り返りの中に、小さくてもよいので、本気の納得をみつける。自分の弱さについて、小ささについて、見逃したり、責めたり、逃げたりしないでしっかり見つめ、大事にする。それが大きなよいものに育つように、新たな一歩を踏み出して、支えていく。皆さんのこのような振り返りのときには、神さまが共にいてくださいます。
後期はすぐ始まります。みこころ祭も近づいています。あわただしさもありますが、前期と後期の間のこの区切りの時期をよい振り返りの時としてください。皆さんが自分の本気や納得を、振り返りを通してみつけてくださることを期待しています。