校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

7月3日初等科朝礼 目に障害がある人が走る

2024.07.03

 子どもたちは走ることが好きです。子どもにとって走ることは、身体の発達に必要なことです。視覚障害がある方のマラソンの体験の話を聞く機会があり、走る練習の話には大変感銘を受けました。子どもたちにもぜひ知ってもらいたいと考えました。画像は初等科運動会練習の一場面です。

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  皆さんは体育の授業が好きですか。体育では色々なことをしますが、何が好きですか?走ることは好きですか?

 私は去年の秋にひざの怪我をして、一時は松葉杖なしでは歩けませんでしたが、今では自分の足で歩けます。少しずつ走れるようにもなりました。まだまだ早くは走れません。でも、走れるようになってきたときには、とてもうれしく感じました。走ることは苦しいと思っている人もいるかもしれませんが、走れることはとても気持ちよい。皆さんが力いっぱい全速力で走っている姿を見ると、とてもうらやましいです。

 病気や事故で歩けなくなる、走れなくなる、ということはとても大変なことです。時には治らない病気や事故で足を失ってしまうこともあります。今年の2月の学習発表会での4年生のスポーツに関する発表には、義足の話もありました。足を失ってしまった人は、「義足」という、自分の足の代わりをしてくれる道具を足につけて歩いたり、走ったりします。走るためのスポーツ用、競技のための義足はブレードという特別なものです。皆さんも写真や動画で見たことがあるでしょう。

 ブレードをつけて走る人の姿を見ると、力いっぱい走っていてすばらしいと思いますが、怖くないのだろうかと心配にも感じます。ブレードという新しい足を信じて、少しずつ練習していくのでしょう。身体の使い方や走り方を学ぶのでしょう。

 歩けなくなってしまった人がブレードをつけて、もう一度走れるようになったとき、とてもうれしかっただろうと思います。自分で走れることはやっぱりうれしいことです。

 目の不自由な方のマラソンもあります。視覚に障害があっても、スポーツが好きな人、走りたい人もいます。

 視覚に障害がある人が走るときは、障害のない人に一緒に走ってもらいます。「伴走」と言います。歌を歌うときにピアノで「伴奏」してもらいます。両方とも「ばんそう」と言いますが、「伴」の字は同じでも、「そう」は漢字の字が違います。走る方は、「走る」を「そう」と読みますし、音楽の方は、演奏するときの「奏」の字です。マラソンの伴走者と目の見えない人は1メートルくらいの長さのロープを輪にしたものを二人で手で持って、一緒に走ります。ペースを合わせて走ることが大切だそうです。視覚に障害がある人も走る力はあるので、伴走者が目の代わりをしてくれれば安心して走れます。

 視覚に障害のあるマラソンランナーの話を聞く機会がありました。子どものときの病気で目が見えなくなった人です。8歳で見えなくなったそうですから、2年生くらいです。視覚に障害がある子どものための学校に入学して、小学生の時は学校で野球や柔道をしていたそうです。視覚に障害がある人のためのやり方やルールがあるそうです。そして、大人になってからマラソンに挑戦しました。

 まず、初めに円周走という練習をしました。円周走では、中心となる棒を立てて、そこから20メートルの長さのロープを張り、そのロープを自分の腰に着けて、棒を中心としてぐるぐると走って回ります。そうすると、直径40メートルの円を走ることになります。この円の一周は125メートルになります。想像できますか?こうすれば安心して一人で走れます。変な方へ行ってしまう心配がありません。こうして初めて自分で走ったとき、本当にうれしかったのだそうです。自分でも走れた!それで、走る練習を続けました。初めの一ヶ月で1日に12周走れるようになって、2ヶ月で24周3㎞、3ヶ月で48周6㎞、4ヶ月で10㎞走れるようになって、それから伴走者を探して、道で走る練習を始めたそうです。

 視覚に障害のある人は伴走者から道の様子を言葉で聞いて、一緒に走ります。右に曲がる、段差がある、登り坂がある、向こうから車が来る、など教えてもらいます。視覚に障害のある人は耳や他の感覚も使って、まわりの様子を感じ取ります。そして、伴走者と二人で走っていきます。伴走者の人と一緒に走ると、うれしいことは自分と伴奏者と2倍になるし、大変なことは半分ずつになるのだそうです。お互いにお互いを大切にして、一緒にマラソンを走るのだそうです。

 この方の話を聞いてすごいことだと思いました。障害というと大変なことです。不自由なこともたくさんあるはずです。でも、この話をしていた方はとても明るくて、前向きで、生きることを楽しんでいました。できないことがあっても、できることを探していました。

 今年の夏にはフランスのパリでオリンピックがあります。そして、オリンピックの後には障害のある方々のためのパラリンピックが開かれます。パラリンピックにも注目したいと改めて思いました。どのような選手の活躍があるか楽しみです。

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