校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

1月9日中高等科 新年の祈り

2024.01.10

 中高等科も冬休みを終え、学校生活を始めました。全校生徒がソフィアバラホールに祈りの静けさをもって集まりました。聖フランシスコにちなんだ「平和の祈り」を唱えることがこの祈りの伝統になっています。冬空の校庭ではサザンカが色鮮やかに咲いています。

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 新年あけましておめでとうございます。今年も皆で実り多い年といたしましょう。

 1月1日に能登半島で大きな地震がありました。被害に遭われた方々のためにお祈りいたしましょう。皆さんのご親戚などは大丈夫でしょうか。お見舞いします。また、2日には羽田空港で事故があり、驚かされました。このように、新年早々心配なことが続き、世界の状況も平和への道のりは今だ困難に思われます。世界は不透明な状況にありますが、新しい年の始まりですから、期待や希望をもって始めたいものです。

 多くの皆さんからクリスマスカードや年賀状をいただきました。ありがとうございました。様々な思いでイエスを迎え、新たな年に臨んでいらっしゃることが伝わってきました。お返事はしませんが、大切に読ませていただきました。

 皆さんはこの冬休みをどのように過ごしましたか?ご家族との良い時間やゆっくりと過ごす時間ももち、新たな気持ちになって今日を迎えていますか?勉強に忙しかった方もあったでしょう。よく頑張りました。年の初めに何か目標をたてたり、決心をしたりした方もいらっしゃることでしょう。

 一人の方がクリスマスカードに、2023年は言葉のもつ力を再認識した年だったと書いてくださいました。以前は自分の使う言葉を何気なくとらえていたということですが、学年が上がってきて、人との関わりの中で、自分の使う言葉の意味や力に気づいたということです。どのような言葉を使ったら、よい力になるだろう、協力して進むことができるだろう、と考えたのでしょう。それまでも決して無責任に語っていたのではないでしょうが、自分がどれほど本気で語っていたか、自分の言葉にどれほどの力があるのかと気づかされることがあったということでしょう。私も考えさせられました。皆さんはご自分の言葉について、どのような意識をもっていますか?

 この冬休みの間に私は2つのことに出遭い、考えさせられました。一つはものごとを自分事にするということです。これは、人ごとでなく自分のこととして考える、ということです。今までにも、世界で起こっている様々な出来事について、どれほど遠くの国のことだとしても、他人事でなく自分のこととして考える、自分事と考えるということが大切だという考え方を皆さんたちの中に聞いてきて、これは聖心生にとって大事なことだと考えてきました。他人事でなく自分事として考えるということを皆さんの中に聞き取って、これが聖心生のグローバルマインドの姿勢だと感じられ、とても頼もしく思ってきました。皆さんもそのように思いませんか?

 今回私はある文章の中で、一人の会社経営者の方の言葉に出遭いました。この方は東京の老舗のお菓子屋さんの経営者ですが、自分がなぜ今の仕事に就いているかをたどりながら、自分事として考えることの意味を語っていました。この方は大学を出てから、まずある会社に就職されると、その会社が他社と統合することになります。会社の大きな変化の時でした。その時に統合に向けたプロジェクトチームに参加させられます。まだ若手だったので、事務整理のような役割だったようですが、その中で会社の一大事を自分事としてとらえる経験をしたと言います。そして、やりがいやおもしろさを感じたのだそうです。それから、お菓子屋さんの会社には、結婚することになった相手の方のご家庭だったからということで入社することになり、またそこで、その会社の経営に自分事として関わることになっていきます。このような流れで会社経営に携わるようになって、この方は改めて、ものごとを自分事として考えることが人生を幸せに過ごすための力につながると考えるようになったそうです。

 この方によると、自分事化するとは、出来事に対して主体的に考え、働くことだそうです。たとえば、何かの集まりや行事があるときには、一出席者としてではなく、どのようにしたら面白いものになるかと考える運営側に回るということであり、誰か困っている人がいたら、一緒に解決策を考えることです。この方は学生時代の自分にはこの力がなかったと言っています。試験があるからと勉強し、誘われたからとクラブやサークルに入り、興味がなかったらすぐやめてしまった。つまり、受身的な姿勢でしかなかった。しかし、社会に出てから、さまざまに起こる出来事に対し、自ら考えて乗り越えることで、困難を楽しめるように自分が変わったと言っています。そして、自分がこのことに気づいたのは大人になってからだったけれど、今の世界の予測不可能な状況では、若い人々に、この自分事として考える力が必要不可欠だ、中高生にもこの力をぜひつけてほしいと考えています。つまり、身近な問題に自分たちで関わり、考えて解決を探す経験をぜひしてほしいということです。

 私もこの方の意見に賛成です。この方が言っていることは、このような生き方が有利だからとか、役に立つからということではなく、ものごとを自分事としてとらえることは、生きる上で面白いし、意味深いし、生き生きできる、人生を幸せに過ごすこができるということです。この方自身は、言わば巻き込まれていく形で他人事から自分事へと踏み込んでいきますが、その中でその意味深さをつかんでいらっしゃいます。皆さんにもぜひ自分の事としてものごとをとらえ、傍観者でなく、主体的な存在として色々なことに関わってほしいと感じます。大きな地震災害が起き、世界でも平和でない状況がある今、私たちは自分事としてものごとをとらえることなら求められています。

 もう一つのことは対話の力です。今の世界は格差や対立や分断が大きな問題と言われます。福島で対話に取り組んでいるグループがあることを知りました。そこでは、対話の反対を分断ととらえています。つまり、対話がないところで分断が起きるということです。福島は大震災後の原発事故により大きな被害を受けました。そして、原発については色々異なる意見があります。推進する人々も、反対する人々もいます。この異なる意見がある中で、立場の異なる人々が対話を進めています。その対話のルールは相手の意見を否定しないことです。自分の中の問いを大切にし、結論を急がない。対話することにより、問いを通してお互いに考えを深めていく。対話を終えるときに、自分の中に新たに生まれた問いに気づくようにする。そうすることで、お互いの立場の違いの理解につながると考えられています。相手と自分の考えは異なる、しかし、相手がなぜそのように考えているのかを理解しようと努めるということです。このような対話は立場の異なる相手を認めることにつながります。このような対話があるところでは、意見の一致ではなくても、人と人とのつながりが生まれるでしょう。「私から私たちへ」を今年度の目標とし、対話を目指している私たちも、このような対話へと向かっていきたいものです。

 今日からの皆さんが、ものごとを自分事として捉え、主体的に関わって、学校生活を作り上げていくように、身近なところから対話を求めていくことで、分断ではなくつながりを作り上げていくように、大いに期待します。困難があるところでも、希望をみつけていきましょう。希望をもつことは大事です。そして、私たちが神様に祈りながら求める希望は空しいものではありません。

 今日の聖書朗読は、マルコによる福音書の最初に出てくるイエスの洗礼の場面でした。12月に私たちはクリスマス・ウィッシングでイエスの誕生を祝いましたが、そのイエスは成長していきます。1月8日の月曜日には、イエスの洗礼の祝日をカトリック教会では祝いました。イエスは大人になって、自ら洗礼を受けています。朗読の中でイエスに洗礼を授けるヨハネは、天使ガブリエルからマリアへのお告げの言葉の中で、「あなたの親類エリザベトも身ごもっている」と言われる、その子どもです。イエスに先駆けて生まれ、イエスが来ることを告げ、人々の心を準備させる役目を果たしています。そのヨハネからイエスも洗礼を受け、神が共にいてくださることを改めて体験することになります。このイエスが、クリスマスを祝った私たちには、いつも共にいてくださいます。これが私たちの希望です。現実の状況が困難に感じられても、神様は共にいて、私たちが前に進むよう支えてくださいます。

 そして、今年は辰年ですから、龍が空を上っていくように、皆さんが飛躍していくことを期待します。それぞれの学年でこれから3月の学年末に向けて、一人ひとりが自分の課題に向かっていってください。学年末の大事なまとめの時期になっていきます。12年生で受験を控えている方は実力を発揮してどうぞ成果を得てください。学年の仲間の力を感じながら、自分の勉強に打ち込んでください。応援しています。11年生はいよいよリーダーシップを受け継ぐ時です。学年として対話を進めて、きずなを深めてください。10年生は高等科生としての実感を得る日々にしてください。中等科の皆さんも2月の始めの練成会で、9年生は中等科のまとめとして、8年生もセカンドステージのまとめとして、7年生は初めての経験として、一人ひとり自分にしっかり向き合う時間を深めてください。

 寒い時期ですから健康にも気をつけ、まわりの状況に自分ごととして意識を向けながら、できることを見つけて行動していきましょう。皆さんが対話の中から多くのことを発見することを期待しています。

 

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