校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

1月20日 中・高等科朝礼 「あきらめなければ、道は開ける」

2022.01.22

 日本科学未来館の第2代館長浅川智恵子さんの館長就任スピーチに接する機会がありました。以前よりその活動に注目していましたが、改めて前向きな姿勢に感銘を受けました。ちょうどセカンドステージ生たちが、昨年秋に聞いた卒業生の講演をもとに新たな活動を起こそうとしているのに合わせ、生徒たちと考えてみることにしました。浅川さんも卒業生長嶋さんもそれぞれに障害を持ちながら、活躍されています。写真は8年生の総合的学習での車いす実習の様子です。

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 すばらしい、すぐれた人物について紹介したいと思います。平たく言えば「すごい」方です。お台場にある日本科学未来館では最先端の科学技術を紹介し、人間との関わりや未来の社会について展示しています。そこで昨年館長交替があり、第2代館長に女性の浅川智恵子さんが就任されました。浅川さんはコンピュータープログラミングの専門家でアメリカのコンピューター会社IBMで最高技術職に就いている方です。8月に就任会見があり、それを聞く機会がありました。

 浅川さんは視覚障害をもっています。しかし、子どものころは障害はなく、スポーツ少女で勉強は好きではなかったそうです。12歳のときにプールで怪我を負い、それが原因で14歳で視力を失われています。しかし、目がみえなくてもできることはたくさんあり、スポーツにも水泳、スキー、フィギュアスケートと色々なものに挑戦したそうです。料理も得意だそうです。とは言え、できないことが2つあったということで、1つは情報アクセスで、本や雑誌などの文字情報を自由に読むことができません。もう1つはモビリティで、一人で自由に外出することができません。このことがわかってきて、自分は自立できるのかという問題に直面したそうです。しかし、大学、またその後とプログラミングを学び、情報アクセシビリティに取り組んでいかれました。1985年にIBMに入社されています。浅川さんは点字のデジタル化プロジェクトに取り組み、ホームページリーダーとして音声でオンライン情報を得る機能を開発していきます。このような情報アクセシビリティの開発は、はじめは障害者のような少数派のグループのためのものと考えられていましたが、結果的には皆のためのものとなっていきました。音声による読み上げ機能は多くの人が使っている、大きな意味のあるイノベーションとなりました。

 浅川さんは自分は女性であり、視覚障碍者であることを、多様性として生きていると言っています。そして、SDG'sの「誰一人とり残さない世界の実現」ということを考え、今回の科学未来館の館長職を引き受けたということです。浅川さんの活動に接していると、この方ならではの視点を感じさせられます。たとえば、自動運転の車は視覚障害者に大いに期待されているという発言があったのですが、私はこれまで自動運転車両について、このような障害者からの視点で考えてみたことがありませんでしたので目が開かれる思いがしました。この方ならではの視点ではないかと感じました。館長として科学未来館についても、誰かが創り出した科学技術を一方的に学ぶのではなく、一人ひとりが科学技術を身をもって体験し、自分のものとして共に創るプロセスに参加する場としたいと語っています。一人ひとりの力を集めて未来を変えていく、という発想をもっていらっしゃいます。館長としてこの方だからできることに取り組もうとされています。

 今現在取り組んでいらっしゃることはAIスーツケースというもので、これはスーツケース型のロボットで障害者のナビゲートをする機能があります。行き先を入力すると、目的地まで安全にナビゲートしてくれます。未来の街にはたくさん見られるようになるものと語っていました。浅川さんは「あきらめなければ、道は開ける」を心に生きているそうです。

 セカンドステージの方々が、昨年の秋に伺った卒業生長嶋愛さんの講演をもとに、セカンドステージアクションとして行動を起こそうとしていると聞きました。長嶋さんは障害をもっているからこそ経験したこと、感じたことを話してくださいました。「できないではなく、~~したい」という姿勢で生きている方です。セカンドステージアクションでは、多様性を受け入れ、共に生きる、違いを受け入れることを目指し、知る、認める、関わるの3つのステップに取り組むそうです。このセカンドステージアクションを応援したいと思います。「あきらめなければ、道は開ける」このスピリットで、サードステージの皆さんも、それぞれ進みましょう。

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