校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

1月27日中高等科朝礼 今はお互いを大切にする時 「麦ばあの島」を紹介

2022.01.30

 1月26日の朝日新聞夕刊に、古林海月著のマンガ「麦ばあの島」を紹介する記事をみつけました。この作品はハンセン病とその差別の問題を描いています。コロナ禍第6波にある今、差別の感情について生徒たちと考えてみました。

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 26日の朝日新聞夕刊にマンガの紹介記事がありました。そのマンガは、あるおばあさんとの出会いから始まるストーリーです。そのおばあさんの名前は「麦・むぎ」で、おばあさんは島に住んでいたので、麦おばあさんの住む島、と言う意味で、このマンガのタイトルは「麦ばあの島」と言います。どのような島で、どのようなおばあさんなのでしょうか。

 マンガの主人公は人生に失敗したと感じ、嫌な思いをしている若い女性です。その女性が麦ばあに出会います。麦おばあさんは田舎の小さな美容院というか、理髪店というか「ヘアサロン」という看板の小さなお店で働く、美容の心得のあるおばあさんで、ひっそりと暮らしています。とても穏やかな良さそうな人で、同時に何か不思議な人です。主人公が捨て鉢になって、少しひねくれているところを偶然助けてくれます。自分のいのちを大切にしなさいと教えてくれるおばあさんですが、主人公には変な人と映ります。しかし、だんだんとこのおばあさんと関わるようになり、その人生を知って驚き、納得していきます。

 このマンガは学校の図書館にもあります。改めて少し読み返してみました。マンガですが、とてもまじめな作品です。実はこのマンガの麦おばあさんは、ハンセン病の元患者です。麦ばあの島とは岡山県の瀬戸内海にある島で、麦おばあさんはそこにある療養所に住んでいました。舞台は長島にある邑久光明園です。

 美容の心得のある麦おばあさんは、映画「あん」に出てくる小豆のあん作りの上手はおばあさんと、ストーリーとして少し似ているところがあります。この二つの物語の関連性はわかりません。おそらく、療養所で何かの技術や技を身につけたこのような人が全国にたくさんいたのでしょう。

 主人公の女性は麦おばあさんから色々な話を聴きます。病気がわかり、家族と別れて療養所へ行き、島の中で隔離された生活することになったという辛い過去の話です。麦おばあさんから聴くハンセン病差別の歴史です。

 このマンガはハンセン病に対する差別は間違いだった、繰り返されてはならないということを伝えています。そして、ハンセン病に対する差別の問題は、コロナ禍での差別的な状況が心配されるなか、改めて繰り返し注目されるようになっています。私たちも考えなければならない問題です。ハンセン病のような感染症は、患者さんの治療と共に、流行させないための対応も必要です。接触を避けることも必要でしょう。しかし、感染した人が安心できる場所で治療を受け、健康を取り戻すということが一番大切なことです。それにもかかわらず、感染症に対して周囲の人々は「うつるのではないか」と不安になったり、心配したりしてしまいます。自分を守ろうとして、いつの間にか人に厳しくなったり、責めたり、裁いたりする気持ちになっていくことがあります。それが行き過ぎると差別になります。ハンセン病に対しては行きすぎがあり、制度として国全体で加担していたのではないかと反省をもってとらえられています。

 このところオミクロン株の流行が拡がり、今は誰が感染しても不思議でない、誰でもが感染する可能性がある状況です。お互いに気をつけて生活し、もし感染した人がいたら、その人を大切にする、そして感染が拡がらないように関係する人も自宅待機するなどして、皆で大切に過ごす、そのような姿勢が大切な時です。学校生活においても、自宅で勉強している友だちがいるかもしれません。学校を休まなくてはならないということは、残念に感じたり、計画通りにものごとが進まなかったりすることかもしれません。しかし、誰のせいと考えても解決はありません。お互いを大切にすること以外に、今の状況を乗り越える方法はないのではないでしょうか。

 もし、誰のせい?と思う気持ちを感じたら、自分を振り返ってみましょう。責める気持ちはどこから来るのだろう?お互いを大切にする気持ちで進みましょう。

 「麦ばあの島」は学校の図書館にあります。ぜひ手に取って見てみてください。

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