校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

2月26日・25日初等科・中高等科朝礼 アマゾンと日本を大切にする心がつながる

2021.02.28

 教皇フランシスコによる新しい使徒的勧告「愛するアマゾン」の日本語訳が出版されました。そして、「潜伏キリシタン図譜」という日本のキリシタンに関する立派な書物もこのほど出版されました。そこに教皇フランシスコが巻頭メッセージを寄せています。一見大きく異なるように見えるこれら2つの書について、教皇フランシスコの思いを探り、児童・生徒と考えてみました。「潜伏キリシタン図譜」にあ愛するアマゾン001.jpgる教皇フランシスコのメッセージには2つのポイントがあり、今回児童・生徒には話さなかったポイントにおいて、現代日本におけるカトリック学校を初めとするカトリック施設などの活動が信徒の数に関わらず社会の中で広範囲にわたることをあげ、キリシタンたちが弾圧下にあっても対立的になる道をとらず兄弟姉妹として人々と共に生きる道をとった歴史と結びつけられています。現在と過去を結び着ける視点に目を開かせられると同時に、日本のカトリック教会として受け継がれてきた大切な遺産に気づかされます。CIMG3830.jpg

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 アマゾン、と聞くと何を連想するでしょうか。インターネット書店・ショッピングをまず思いつくでしょうか。今回お話しするアマゾンは、南米大陸の熱帯雨林のアマゾンです。アマゾンはブラジルに大きく広がっていますが、詳しく見れば、ブラジルに加えて、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナム、ベネズエラ、フランス領ギアナの9ヶ国にまたがる広大な熱帯雨林です。豊かな森林として、地球の肺とも呼ばれ、地球全体の酸素の3分の1を産出していると言われます。そして、そこには冬の日本の動物園で温泉につかる姿が多くの人に愛されているカピバラや、獰猛だけれど優美やジャガー、色彩の美しいインコ、ナマケモノのような珍獣も住んでいます。しかし、開発のために森林の伐採による森林破壊が深刻な問題となっています。森林火災も問題になりました。開発された土地は畑とされて、牛の放牧やサトウキビの栽培に利用されています。

 南米大陸になるアマゾンは日本の反対側にあって遠い国のように感じられますが、ブラジルを例にとって考えてみると多くの物品が輸入されています。ブラジルから日本へは鉱物の他、オレンジジュースやトウモロコシ、パルプ、大豆、砂糖の原料である粗糖、そして鶏肉も大量に輸入されています。とても身近な品目です。

 このアマゾンについて、教皇フランシスコが「愛するアマゾン」という本を出版されました。とてもインパクトのある印象的なタイトルの本です。この本は1年前、2020年2月にローマで出版され、このほど日本語訳として出版されたものです。2019年10月にローマではアマゾンの教会についての会議が行われ、アマゾンの教会の代表者や現地の人々など多くの人が集まり、話し合いが行われました。この本はこの会議に基づいて教皇フランシスコが考えをまとめたものです。

 教皇フランシスコはアマゾンに抱く4つの夢があると書いています。アマゾンの社会、文化、エコロジー、教会に関する4つの夢です。教皇フランシスコが夢見るアマゾンは、貧しい人々や先住民族、最底辺におかれている人々の権利を大切にし、そのために闘うアマゾンであり、独自の文化の豊かさが大切にされ、人間の美が豊かに開花するアマゾンであり、いのちを豊かに育む川と熱帯雨林の格別な自然の美しさがあり、それを人々が大事に世話をしているアマゾンであり、そこにはアマゾンに身を捧げ、アマゾンを血肉と感じる人々の生きるキリスト教共同体がある、このようなアマゾンであるとしています。

 「愛するアマゾン」という題名から、アマゾンをとても大切にする教皇フランシスコの強い思いが伝わってきます。それほどまでに強い思いを抱かれるのはなぜなのでしょうか。アマゾンには地球全体にとってかけがえのない貴重な自然があり、独特の文化と人々の生活があります。そしてそれらが開発のために破壊されています。世界全体の宝であるアマゾンが破壊されようとしている、このことは深刻な問題です。しかし、教皇フランシスコの思いはそれだけに留まらず、世界全体に向けて、同じようなことが他の所でも生じていないか、と問われているように感じられます。この本をよく読んでみると、アマゾンを愛することが、私たち一人ひとりが自分の国と文化を大切にすることに繋がっていることが見えてきます。アマゾンの独自の自然や文化が経済や効率というたった一つの物差しで測られてしまう、貴重ないのちの場であるアマゾンがお金を得るための資源として利用されている、このようなことが自分たちの国にも起こってはいないか、そのように問われているように思えてきます。

 今回ちょうど時期を同じくして、「潜伏キリシタン図譜」という立派な本が出版されました。日本各地の潜伏キリシタンの歴史について、たくさんの図版と共に詳しい説明が全部日英対訳で書かれている本です。この本の巻頭に教皇フランシスコはメッセージを寄せています。日本のキリシタンたちが弾圧にもかかわらず信仰を守ったということは、今の世界の様々なところでキリスト教だけにかかわらず宗教や信仰のために弾圧を受けている人々に対して大きな励ましになる、としています。日本の歴史が世界全体のためになるという考え方です。日本の私たちにとって意味深い言葉です。

 アマゾンが世界の宝であるように、日本のキリシタンの歴史も世界のために重要とされます。教皇フランシスコの言葉では、アマゾンと日本を大切にする心がつながっています。教皇フランシスコはそれぞれの国の独自の文化や歴史を大切にし、それぞれの国で開かれていくイエスの教えの豊かさを大切にしています。日本の私たちもアマゾンについて改めて考えながら、自分たちの国についても改めて考えてみたいと思います。 

教皇フランシスコ 使徒的勧告「愛するアマゾン」 カトリック中央協議会 2020年12月

「潜伏キリシタン図譜」 かまくら春秋社 2021年1月  

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