校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

1月28日中高等科朝礼 長崎から学ぶ平和・対話 核兵器禁止条約発効に

2021.01.31

 1月22日に国連で核兵器禁止条約が発効しました。これは2017年7月に採択されたものです。世界が平和に向かうための大きな出来事と言えるでしょう。例年11年生は7月に長崎研修旅行を実施し、語り部さんから被爆体験談を伺ったり、原爆資料館を見学したり、原爆の事実に触れながら平和学習を行いますが、昨年は現地に赴くことが残念ながらできませんでしたので、オンラインで語り部さんの体験を伺い、27日にもNHKテレビディレクターで、長崎で被爆者を取材した番組を制作された渡辺考氏の話をオンラインで聞きました。他学年でも、オンラインでの活動を通して様々なつながりを拡げています。

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 1月27日のLHRで10年生の皆さんはアメリカに在住し、スタンフォード大学で活動する卒業生からSTEM教育の一環であるSky Laboについての話をオンラインで聞きました。11年生は長崎について、NHKのテレビディレクターに講演していただきました。12年生は前週に英語のオーラルコミュニケーションの授業でスタンフォード大学の教授から話を伺う機会を得ましたし、9年生は2月に卒業生で里親の活動をされている方の講演を予定しています。7・8年生は昨年11月に卒業生で小児科のドクターの話を伺うことができました。コロナウイルスにより活動が制限されている中でも色々な可能性を探り、外の世界への拡がりをもつことはとても大切なことです。

 11年生への講演を一緒に聞かせていただきました。渡辺考氏は長崎の被爆者に取材したテレビ番組を制作され、その経験から被爆者の視点を通して考える核兵器や平和について、そして被爆者に対する差別についてなど、とても印象深い話をしてくださいました。*ちょうど1月22日に世界の平和に向けての大きな意味ある動きがあった直後のことでしたので、より一層考えさせられるものがありました。

 1月22日に国連で核兵器禁止条約が発効しました。これは2017年7月に採択され、批准国・地域が50に達してから90日後に発効するという取り決めに則ったものです。現在51か国が批准しています。残念ながら日本、またアメリカやロシアなどの核保有国は批准していません。この条約は世界で核兵器の全廃に向けて、包括的に法的禁止をする国際条約と言われます。ローマのバチカンはタイ、ガイアナと共に最も早く批准しています。カトリック教会の姿勢です。11年生の講演の質疑応答でこの条約に関わる質問が生徒から出され、教皇フランシスコは核兵器に対して明確な考えを述べている、来日の時の教皇フランシスコのメッセージをぜひ読んでみてくださいと渡辺氏が言われました。そこで今回、読み直してみました。

 長崎において教皇は「核兵器は、今日の国際的また国家の安全保障に対する脅威からわたしたちを守ってくれるものではない」、「核兵器の保有は、[平和と安定へ]の望みに対する最良のこたえではない」と語っています。また、広島では、「戦争のために原子力を使用することは、現代においては、これまで以上に犯罪」、「原子力の戦争目的の使用は、倫理に反します」、「核兵器の保有は、それ自体が倫理に反しています」と語っています。そして、「思い出し、ともに歩み、守る。この3つは倫理的命令」と言って、被爆者と共に歩もうとしています。**

 11年生の講演の最後には、平和を築くための対話の大切さが取り上げられました。意見の異なる人の話を聞き、話をする。単純なことのようですが、勇気を必要とするものです。核兵器禁止条約については、政治的に様々な考え方が存在します。日本は批准していません。核保有国も批准していません。世界をどのような場に作っていくかは、これからの世界の歩みにかかっています。皆さんの手にかかっています。平和について、放送朝礼という機会に皆さんに向けて語りました。これから皆さんの間で語り合っていってください。

*渡辺考氏の番組については著書に詳しい。 渡辺考「少女たちがみつめた長崎」書肆侃侃房 2020年

**引用は「すべてのいのちを守るため 教皇フランシスコ訪日講話集」(カトリック中央協議会 2020年)による。

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