校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

1月8日中高等科 新年の朝礼 喜谷昌代の生涯「ひとすじの光」

2021.01.13

 1月8日に冬休みを終えて、学校生活を再開しました。今回も放送による話となりましたが、生徒たちの活気が学校にもどってきたことを感じながら、新年のメッセージを伝えました。毎年、多くのクリスマスカードや年賀状を受け取り、その中から生徒たちの思いや決意を汲み取って話しています。

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 新年おめでとうございます。また今日から学校生活が始まりました。心新たに、緊張感をもって学校に来ていることと思います。冬休みの間には、多くの皆さんからクリスマスカードや年賀状をいただきました。ありがとうございました。今回は、昨年からのコロナウイルス感染流行の経験を通しての皆さんの考えや決意を、多くの方が書いてくださいました。いくつか紹介します。

 普通や当たり前のことのありがたみに気づいたこと、思う通りにならない生活の中でも新たな挑戦ができたこと、悲観的に考えずにできることを模索し、誰かを引っ張っていくことや人の役に立ちたいと思うようになったこと。制限がある中でも力を合わせて工夫を凝らすことで、新たにできることが増えてきたこと。逆境と見えることを力に変えて、かけがえのない経験をすることができたこと。状況に合わせた正確な判断力、柔軟性を培うことができたこと。できなくなったことより、できることをみつけ、今の状況でできる最善のことを考える。このような言葉を皆さんの中にみつけ、とても頼もしく感じました。

 これからに向けても、色々な決意がありました。生きる上で何を大切にすべきか深く考え、守るべきものをしっかり守っていきたい。余裕のない時こそ深呼吸して周りに目を向けたい。自分の想像力を最大限正しい方向に向けていきたい。自分が考えたことを行動に移し,納得するまで追求したい。このようなものがありました。

 希望についても考えがありました。希望には現実を変える力があると知り、希望の作り手になっていきたいと改めて考えた。希望が消えそうな時だからこそピンチをチャンスに変え、あきらめるのではなく、人に希望をもたらすために自分はどうしたらよいかを常に自分に問いかけていきたい。このような考えの深まりをみつけました。皆さんの心にも響くものがあるでしょう。

 私はこの冬休みに卒業生喜谷昌代さんについての本を読みました。2017年の創立者の祝日にお招きして講演していただきました。「もみじの家」という医療的ケアを必要とする子どもたちのホスピス設立に力を尽くされた方です。若い時からのボランティアの経験を話してくださいました。残念ながら一昨年の秋に亡くなられ、今回お人柄を偲んで記念の本が出版されました。それを読むと、喜谷さんはどのような状況でもまわりの人のことを親身に大切に考え、いつでも自分にできることはないかと考えて行動されていたことに心を強く打たれます。赤十字の活動に参加され、ボランティアとして献身される中で、人に寄り添う姿が純粋で、この方を通して生きる希望が伝わってきます。それは、喜谷さんが出会う人誰に対しても、この方は私をとても大切にしてくださっていると感じさせるような生き方をされていたからです。ご本人にしたら当然のことをしていただけとおっしゃるに違いありませんが、心から親身になって相手のことを大切にするということは、簡単にできることではありません。あなたの存在は大切と伝えることは希望を生み出す力です。私はこの本を講演会を思い出しながら読みました。「ひとすじの光」という本です。図書館に入れていただきますので、ぜひ読んでください。希望の作り手として生きた、私たちの先輩のストーリーです。

 今日からの学校生活で、私たちは希望の作り手にならなくてはなりません。どのようにしてでしょうか。緊急事態宣言が東京と首都圏3県に出されます。感染流行防止のために社会生活が再び制限されます。その中で、今回学校は休業要請から除外されています。それは小中高生には学校で学ぶことが大変重要だと考えられているからです。これから私たちは感染防止対策に厳しく努め、緊張感をもって学校生活をしていきたいと思います。春の休校期間中のことを思い起こすと、学校に来られることはとてもありがたいことと感じているでしょう。この貴重な機会をしっかりと活かしましょう。人ごとでなく、自分のこととして感染防止のためにルールを守ってほしいと思います。私たちは一人では自分を守ることはできません。協力しなければなりません。しかし、出発点は一人ひとりの自覚です。今は普通の時はないことをしっかり意識しましょう。

 通学時の交通機関の中でどのような行動をとるかもよく考えてください。電車・バスの車内では、人はみな緊張して会話せず、静かに乗車しているのではないでしょうか。友人との会話も、普段なら許されることであっても今はひんしゅくものです。車内は沈黙を守ってください。それは指示やルールだからではなく、自分もまわりの人も感染から守るためのことです。このことを忘れないでほしいと思います。制服を着ている中高生ということだけで、学校にかかわらず注目されます。だから、責任ある行動を自分で考えてほしいと思います。そして、学校の中でも意識高く生活してください。昼食のお弁当の時には特に注意が必要です。食事中は沈黙です。今、何をすべきかを主体的に考えて行動しましょう。皆さんはそれができる人たちであると信頼しています。

 今日、私は黄緑色のリボンを身につけています。愛媛県から始まったシトラスリボンプロジェクトと呼ばれる、コロナ禍の偏見や差別をなくすためのプロジェクトのシンボルです。感染した人を差別せず、医療従事者に感謝し、応援します。これから感染流行の中で生きていかなければならない私たちです。いつ誰が感染しても不思議ではない状況とも言えます。だから、お互いを支え合い、まわりの人と連帯する姿勢で生活したいと思います。

 今回の聖書朗読では、コリントの信徒への第一の手紙10章13節が読まれました。この箇所は、皆さんの一人が今大切にしている聖書の言葉として年賀状で知らせてくれたものです。神様は私たちに乗り越えられない試練は与えられません。試練がある時には、必ず乗り越える手段も用意してくださいます。どのような時も神様はいつも私たちのことを大切にしてくださいます。このことを信じ、神様に信頼して、あきらめずに進む。これは希望の作り手の心です。一人ひとり自分の場で、試練のチャレンジをしっかり受けとめて希望を作っていきましょう。

一般財団法人 重い病気を持つ子どもと家族を支える財団(キッズファム財団)

 「ひとすじの光 喜谷昌代の生涯」 文芸春秋 2020年

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