校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

11月17日 サードステージ 聖フィリピン・デュシェーンの祝日

2020.11.20

 聖フィリピン・デュシェーンは聖心会の2人目の聖人、11月18日が祝日です。1818年にフランスからアメリカ大陸に聖心の教育をもたらし、インディアンと呼ばれるアメリカ先住民にイエスのみこころを伝えることを志しました。その生涯を思い起こし、生きる姿勢を学びます。今年はステージごとにZoomを利用した動画配信による朝礼で祝日の祈りを行いました。生徒の制作した聖フィリピンの生涯を表す動画のあとに話をしました。今年は生徒たちは鳥の羽を紙を切って作り、この日のシンボルとして胸に飾りました。

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 不屈の人、強い意志をもって夢の実現をあきらめずに生きた人、200年前のアメリカの開拓地で聖心の教育を広めるために働いた人、祈りの人、インディアンと呼ばれるアメリカの先住民の人々を大切にしようとした人。聖フィリピン・デュシェーンの特質について言われていることはたくさんあります。

 今日私たちは羽をフィリピンのシンボルとしてお祝いしています。羽はインディアンの衣装に欠かせないものです。羽飾りを身につけることは大きな誇りでした。インディアンたちはとてもおしゃれだったと言われています。しかし、フィリピンがインディアンに出会ったとき、インディアンたちは白人たちに追い立てられた長い旅のあと、何もかも失った状態でした。羽のついた立派な衣装も、インディアンとしての誇りも、なにもかもです。そこにフィリピンが訪れて生活を共にしました。フィリピンは弱い立場の人々、貧しい人々を大切にした、アメリカの聖心にとって偉大な人物です。

 ところが、近年、アメリカの聖心の人々に対し、フィリピンは深刻な問いを呼び起こすことになりました。この秋にアメリカでは黒人差別の問題が大きく取り上げられました。Black lives matter.として多くの人々が差別の問題のために立ち上がったことは記憶に新しいことです。このような運動の中で、フィリピンについて大きな疑問がでてきたのです。フィリピンはインディアンに対して心を寄せていましたが、黒人に対してはどうであったのか。答えは残念ながらYESではありませんでした。当時の聖心の生活を調べてみると、フィリピンは黒人の人々の苦しみに対して立ち上がることなく、奴隷制度を受け入れていたかのように見えるからです。このことが問い直されるようになり、フィリピンはアメリカの聖心の人々にとってある意味で苦しみともなってしまいました。フィリピンを尊敬していた人々がフィリピンの中にも大きな欠陥と過ちをみつけてしまったからです。聖人としてのフィリピンに傷がつくような思いとなり、フィリピンを受けとめるのがとてもむずかしくなりました。強いと思っていたフィリピンにも弱さをみつけたからです。今、人々はフィリピンと共に心を深くふり返っています。

 弱さに向きあうのは辛いことです。今までアメリカの聖心の人たちは、フィリピンの強さに倣って強くなろうとしてきた一方で、フィリピンの中にあった黒人に対する差別を自分たちが見ることできなかったことに深く気づきました。自分たちの中にある差別する心を見逃していたことにも気づきました。これは理想が敗れるような辛い現実です。しかし、この辛さを通して、ほんものへと目が開かれることを祈って歩んでいます。フィリピンと共に差別する心の根深さや、正しくものを見えなくさせる心の闇が自分の中にもあることに気づけるようになったととらえようとしています。

 アメリカの聖心の人々と共に、私たちも現実を厳しく見て、自分を見つめ直す力を願いましょう。自分の中に、まだ見えていないことがたくさんあることに気づけるように祈りましょう。今回の祝日のシンボルの羽は私たちに、私たちの中にもある貧しさを思い出させてくれます。そして、そこに神様が共にいてくださるという希望をみつけましょう。

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