校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

8月25日 中高等科 夏休みを終えて 想像力をもつ

2020.08.25

 中高等科は先週からクラブ活動登校を始めていましたが、今日から全校登校して午前中授業を始めました。学校には活気が漲っています。上の画像は校内にあるポスターの一部です。コロナウイルスからお互いを守るために、相手のことを想像して、と呼びかけています。今日は学校生活の始めに、生徒たちと想像力について考えました。中高等科は各教室へのZoom配信による集会でした。生徒会が司会し、防災安全の先生からの話、祈り、みこころ祭や選挙管理委員からの伝達事項もありました。このような形式の集会も少しずつ定着しそうです。

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 短い夏休みでした。8月に入ったら、急にとても暑くなりました。皆さん元気で過ごしましたか?先週、クラブ活動で多くの皆さんが登校してきました。暑さの中、活動する姿を見て、学校を大事にしている皆さんの気持ちが伝わってきました。今日も楽しみに学校に来たと思います。

 短い夏休みだったとは言え、そして、今年は旅行などの活動が自由にできない特別な年でしたが、それでも色々なことを考え、できる限りのことをした日々だったことでしょう。お便りもたくさんいただきました。お便りを読みながら、皆さんの持つ力強さを感じました。いくつかお便りを紹介します。

 春からの休校期間中について、それは自分を見つめる時だったという方、医療従事者の方々に感謝すると同時に差別の問題に気づいたり、社会の中で弱い立場の人々の困難に気づいて、最も弱い人に寄り添う心の余裕を持ちたいと感じたり、オンライン授業の難しさを感じながらも、学べることに感謝して、もっと困っている人たちがいる事実を人ごとと思わず、希望の作り手になりたいと考えたという方もありました。教育の格差は大きな問題だと書いてくださった方もありました。アメリカで人種差別問題が大きくクローズアップされたことをあげて、人類が抱えている課題や社会のひずみがコロナウイルスによって明らかになった、と書いてくださった方もありました。また、いつもの年ならできたことで、今年はできなかったこともたくさんありました。そのためにチャンスを失ってしまったように感じながらも、自分からチャンスを見つけ、作りに行って、有意義に過ごしたいという方もありました。失ったものも大きいけれど、その中でもひそかな希望を見つけて、希望の作り手になりたいと言う方もありました。家で犬を飼うことになって、いのちや勇気について教えられたという方、レイチェル・カーソンの書いた「センス・オブ・ワンダー」という本の中で、自然に触れることは「終わりのない喜び」という言葉を見つけた方もありました。"Working hard is important, but believing in yourself is even more. " という素敵な言葉を書いてくださったお便りもありました。一生懸命になることは大切なことだけれど、自分を信じることはもっと大切という意味です。"Fail forward."「 失敗して前進する」という言葉を書いてくださった方もありました。この考えによって失敗は意味ある大切な経験となります。コロナウイルスという新しい体験から皆さんが深く感じ、考え、学んでいることが伝わってきました。

 「想像力」について書いてくださったお便りがあります。想像力を皆さんはどのような時に使いますか?今お話ししているのはイマジネーションの意味の想像力です。ちょうど7月の最後の12年生の宗教の授業でも、想像力はどのような時に使うかということを考えました。そのときに、「人の気持ちを汲み取ったり、思いやったりするとき」とすぐに答えてくれた方がいました。想像力は楽しいことを考えたりするときにも使いますが、相手の立場になって、人の気持ちを考えるためにはなくてはならないものです。このお便りでは、思いやりのある行動は、相手のことをよく想像することから生まれるもので、直接会うことが難しいコロナウイルスのある今の状況の中でこそ、相手のことを想像して助け合うことが大切、そして、想像力が伴わない行動は人を傷つける、という気づきも書かれていました。とても大事なことです。想像力をもつことは、柔軟で広い心をもつことです。相手のことを知り、受け入れることは痛みを伴うことです。想像力は相手の痛みを受け止めようとする力かもしれません。以前、ブレイディみかこさんを取り上げましたが、彼女の言う "empathy" は想像力なしには働かすことはできません。

 この夏は戦後75年を数えました。戦争を体験した方々は高齢者となられています。この夏、私は多くの高齢の方々の力強い言葉に出遭ったと感じています。皆さんはどうでしょうか?広島に住む90歳を過ぎた女性が「平和は向こうからやってきてくれません。一生懸命にたぐりよせて、つかんで、力を尽くして守らないと。それをわかってもらいたい」と語っています。平和は当たり前のことではない、なんとなく生じるものではない。今の社会にある貧富の格差や男女の不平等などの問題は、戦争が起きる構造であって、それらの課題をなくす努力をしなければならないとはっきり語っています。そして、多くの女性たちが、少女の時に戦争について疑うことをしなかった、何も考えない、考えてはいけない、ただみんなと同じようにすると思っていた、しかし、それは間違いだったと語っていました。もう二度と自分で考えることなしに、何かに従うことはしない、自分で学び、考える。コロナウイルスに直面しても、過度に恐れず、踊らされず、日々の暮らしを大切にしたい、と考えています。11年生の皆さんは7月に残念ながら長崎に行かれませんでしたが、もし行ったとしたらお話を伺ったかもしれない羽田麗子さんという方は新聞のインタビューで「人は殺されるために生まれてくるのではない。平和を作るにはどうしたらいいか、考え、行動し、それを次の人につないでいってほしい」と話しています。私たちは、戦争の時代から遠く離れた今に住んでいます。この方たちの言葉を理解するにも、想像力がなくてはなりません。どれほど、戦争によって深く傷ついたか、恐怖の体験をしたか、そして、2度と同じことが繰り返されてはならないと考えているか。この方たちは、自分で考えること、自分の問いを大切にすること、そして行動を起こすことを大切にしています。このような方たちが切実な思いとして語ってくださることを、人ごととしてではなく、大事なこととして受け止めるためには想像力が必要です。

 8月6日には広島で、9日には長崎で平和記念式典がありました。そこでは、それぞれの市長が去年11月に日本を訪問された教皇フランシスコのことばを引用していました。広島では、「思い出し、共に歩み、守る。この3つは倫理的命令」という教皇フランシスコの言葉を挙げ、その上に緒方貞子さんの「大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分の国だけの平和はありえない。世界はつながっているのだから」という言葉を引用して、「共感」と「連帯」というテーマを挙げていました。長崎では、教皇フランシスコが二つの鍵を示されたとして、一つ目は平和な世界の実現のためにはすべての人の参加が必要であること、二つ目は相互不信の流れを壊さなければならないこと、これらの二つを挙げていました。広島も長崎も突き詰めれば、同じテーマになるのではないでしょうか。平和は自分だけの問題ではなく、お互いの努力で築くものであって、そこには想像力がなくてはなりません。

 今日からの生活で私たちはお互いの間の想像力を大切にしたいと思います。想像力を大切にすることは、学校生活の中での人との関わりを味わい深いものとするでしょうし、思いやりに満ちたものとするでしょう。そして、学校の外での皆さんの行動も、周りの人の立場や思いを想像しながら、柔軟で、思慮深いものとなっていくでしょう。

 そして、想像するだけでは不十分です。想像して、わかったら、行動すること。小さなことでも良いので、行動に移しましょう。心を込めた行動には、希望が備わっています。誰かに対する小さな行動が、希望を作ることになるでしょう。

 これからもコロナウイルス対策をしながらの学校生活です。お互いに配慮しながら、行動の上で守るべきことはしっかり守ってください。今日始めた学校生活を、持続可能なものとするのは、皆さん一人ひとりの賢明で、慎重な行動です。何がふさわしいことか、今求められていることか、しっかり考えて行動しましょう。

 そして、学習にしっかり取り組んでください。7月までの間、学校で授業ができない日々もありました。その間も皆さんはオンラインでできる限り努力しました。しかし、今は学校で勉強できる状況です。その機会をぜひ活かしてください。得意でないこと、逃げたいことにも、心がけて直面してください。自分がしっかり生きる、ということの中にも、希望が生まれます。神さまはいつでも見守っていてくださいます。

 今日の聖書朗読は詩編130、5・6節でしたが、神様を待つ切実な気持ちが表されていました。神様は、神様に希望をおいて心から願い、待つ人に必ず応えてくださいます。

 最後にもう一つお便りを紹介します。アサガオの花は、一日で咲き終わってしまいます。しかし、翌日にはまた新しい花を開かせます。それで花言葉は「明日もさわやかに」というのだそうです。アサガオのように、どのような状況でも毎日希望の作り手になれるようにしたい、と書いてくれました。コロナウイルスの危機にまだある私たちには、一日、一日が本当に大切です。アサガオを思い出しながら、一日一日を大切に過ごしていきましょう。 

 

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