トップページ > Spirit of "Mikokoro" > 5月11日おもしろい本を読みましょう(54)多和田葉子 「雪の練習生」
今日はとても良い天気で気温も上昇しました。夏日を記録したでしょうか。そのような日に紹介する本は、真っ白なホッキョクグマの物語です。この本はサードステージ生で、読書経験も豊富で、文学を極めたい人に薦めます。
とても不思議な本で、冒頭の一行から引き込まれますが、主人公が何者かつかむまでに時間がかかります。描写は非常に具体的でわかりやすいのに、何を言っているのかなかなかつかめません。しかし、どんどん引き込まれます。
サーカスで動物が曲芸をします。ホッキョクグマが立ち上がって、人間のように踊りを踊るとしたら、ホッキョクグマの習性にはない動作です。それがなぜできるようになるのだろう、その謎は最初に解けます。しかし、それが解けても、やっぱりよくわからない、それにもかかわらず物語には引き込まれる・・・そのようにして作者の世界に深く入りこむ体験が文学を読む醍醐味です。
時間と場所が次々に変化し、視点が変わっていきます。想像力を働かせて読んでください。世界が広がります。
作者の多和田葉子はドイツに住んでいます。新聞にドイツでの新型コロナウィルス感染症の経験も語った記事がありました(毎日新聞4月30日夕刊)。そちらも一読をお薦めします。この記事は12年生の宗教の授業でも紹介しました。
多和田葉子 「雪の練習生」 新潮文庫 2011年
聖心女子学院のスピリットを児童・生徒の日々のエピソードからお伝えします。
Sr. 大山 江理子