校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

6月20日中高等科朝礼 ハイチの聖心会

2023.06.20

 6月20日は世界難民の日です。生徒たちは校内で1日シンボルカラーのブルーのリボンを着けて、支援を示しています。今回の朝礼ではハイチの聖心会の動向について生徒に伝えました。不安定な国情を受け、昨秋以来検討中だったものの結果です。生徒たちに難しい決定を下すときのプロセスについて、神様と共にある姿勢を学んでもらえればと考えました。

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 ハイチの聖心会についてお話しします。初等科のハイチデーで大切にしているハイチです。政情不安定な国ですが、聖心会の数名のシスターが生活して、看護師のシスターは診療所で、また小さな学校を運営して働いています。しかし、国の情勢が大変危険な状態となり、今後どうすべきか聖心会として検討しなければならなくなりました。去年の11月ごろでしょうか、皆さんにもお祈りしてくださいとお願いしましたが、覚えていますか?

 今回、ハイチの聖心の今後について最終的な決定のお知らせがきました。現地の状況をよく見て、考えた結果ということです。ハイチに留まることになりました。しかし、バランBalanという現在の場所からは離れて、別の場所で生活をしていくということです。現在の場所は危険が大きく、シスターたちの安全が確保できないからです。しかし、Balanで今まで人々と関わり、仕事をしてきましたので、その地を捨てることはできません。ですから、Balanに仕事には行かれるが、生活のためには安全な場所を探します。このような決断となったと、全世界の聖心へ向けて知らせがありました。世界の聖心で見守り、祈ってきましたので、留まることになって良かったと感じます。また、危険を承知でハイチで活動しようとするシスターたちを応援したいと考えます。

 この決断は聖心会にとって大きなものでした。危険は深刻なので、国外退去もあり得る判断でした。今回、どのようにして決断に至ったかについても報告がありました。3つの選択肢があったということです。1.国外退去、2.今のままBalanに留まる、3.ハイチには残るが別の場所で生活する、これらの3つでした。これらの中から選び、決断していくという難しいプロセスでした。

 このような時に、シスターたちは祈って決めると言います。しかし、祈れば自動的に解決が見えてくるというものではありません。では、どのようなことでしょうか。

 今回は何人かのシスターがこの決断への話し合いに参加しています。それぞれ異なる立場、見方、意見を持っている方々が考えを述べて話し合います。他の修道会の方の意見も聞きました。一人ひとりが祈り、考え、意見を言い、お互いに聞く。祈ることで、一人ひとりが神様と共にいるようにします。神様に助けていただけるよう、信頼します。そうすることで、自分の意見に責任をもつことができます。そして、人の意見にも、神様の知恵が入っていると信頼して聴きます。このようにしても意見の違いはもちろんあります。しかし、その中に道筋が見えてきて、話がまとまっていきます。お互いの気持ちや考えが一致していきます。そこに行くのは簡単ではありませんが、神様が望んでいる解決があると信じて話し合います。これは対話の一つの形です。

 教会の伝統では、このようなプロセスを「共同識別」とも言います。意識の「識」、と別離の「別」です。神様と共に、祈りながら、ものごとを見分けていく、祈りながら考え、決める、というものです。

 私にも経験があります。ずっと若いときのことです。シスター4人のグループで、一つの困った問題を抱えていました。意見がそろわず、対立していました。そのときの課題は、ある一人の困っている人を助けることだったので、助けることが良いのは分かっていても、心配事やリスク、携わることになる仲間への気遣いから来る心配と反対、不安、すぐに決断しない仲間に対する怒り、対立を目にした戸惑いなど、色々な考えや気持ちがごちゃごちゃになっていて、しっかりした話し合いになりませんでした。

 そこで、これではいけない、と皆で祈って、集まり、落ち着いて話し合いました。一人ひとり違った立場の考えや意見を出しました。それまでは対立していましたが、このときはお互いの違いを理解することができました。お互いの主張をよく聞いたら、それまで考えてもいなかった解決が出てきました。皆が納得して、安心し、やるべきことが見えて、実行に移すことができました。私はこのなりゆきにとても驚いたことを覚えています。後から考えて、これは識別の体験だったとわかりました。

 神様と共に答えを探して、みつける。こういう場合は、その時に決めたことがたとえうまくいかなくても、神様が共にいてくださると思って、前に進むことができます。今回のハイチについての決断もそうでしょう。

 皆さんも何かものごとを決めるときに、祈って決めるということを思い出してください。神様と共にあるという安心を感じ、自信をもって冷静になり、自分の言葉に責任をもつことができます。相手も私と同じと感じて、落ち着いて話を聴くことができるでしょう。そうして、よい解決を皆でみつけ、実行に進むことができると良いでしょう。

 皆さんがよい対話をし、よい決断へと向かう経験をしていくことを期待し、願っています。

 

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