校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

5月26日おもしろい本を読みましょう(65)レイチェル・カーソン 「センス・オブ・ワンダー」

2020.05.26

 皆さんは山でハイキングしたり海辺を歩いたりするのは好きですか。自然の中を歩いていると、植物や生きものやいろいろなものを見つけることができます。たくさんのいのちが生きていることに気づくことができます。 

 5月18日に書いたように、教皇フランシスコの「ラウダート・シ」を記念して、世界のカトリック教会では今週をラウダート・シ週間としています。環境問題や気候変動など、地球の中でどのように生きていくことが大切かについて考える1週間です。そこで、今日は「ラウダート・シ」にちなんで、自然を愛する人が書いた本を紹介します。

 レイチェル・カーソンは1962年に出版された「沈黙の春」という本によって有名です。この本は環境問題に人々の関心を向けさせる力となった本です。レイチェルはアメリカ人の女性科学者ですが、ある年に、春になっても鳥の声が聞こえないことに気づきます。毎年なら必ず聞こえるはずなのに、と自然界の異変に気づきます。そして、そこから困難な調査を経て、農薬が自然環境に深刻な影響を及ぼしていること、そのために生物が生死の危機に瀕していることに気づき、「沈黙の春」という本にまとめました。「沈黙」とは、鳥のさえずりが聞こえない静けさのことを表しています。この本は大きな反響を引き起こし、環境問題への関心を高めた一方で、大きな反論も生じたためにレイチェルは苦境に立たされたときもありました。しかし、誠実な研究を通して、人間の活動が自然環境に深刻な影響を与える可能性があることを考える重要性をレイチェルは明らかにしました。

 レイチェルは自然の美しさを愛し、自然の中で生きることを楽しむ人でした。「センス・オブ・ワンダー」は自然の中で生きる楽しみ、自然の神秘を感じる喜びを伝えてくれる本です。甥にあたる小さな子どもと一緒に海に行ったり、森を歩いたりする体験の中から、子どもが自然の中で感じ取るものがどれほど豊かであるかを見いだします。子どもは無心に自然を楽しむことができます。皆さんもそうかもしれません。「センス・オブ・ワンダー」を文字通りに日本語にすれば、「不思議の感性」でしょうか。好奇心とも言えるかもしれません。不思議だと思ったり、すばらしさに感動したり、何だろうと知りたく感じたり、神秘的なものに気づいたり、自然の向こうには神様がいらっしゃると感じたりする気持ちも含まれているかもしれません。大人は自然を利用したり、人間の都合の良いように変えようとしたりすることがありますが、子どもはただ楽しむことに一生懸命になれます。レイチェルは大人になっても、そのような心を大切にもち続けていました。そして、そのような心をもつことの大切さを「センス・オブ・ワンダー」の中で、静かに書いています。

 残念ながらこの本は少し手に入れにくいかもしれません。新しい本ではありません。しかし、学校の図書館にはありますし、公共の図書館にもあるかもしれません。もしかすると、家の本棚にお父様やお母様がもっていらっしゃるかもしれません。大きな本ではありませんが、とても素敵な本です。今すぐにではなくても、いつかぜひ手に取ってみてください。子どもの心の豊かさ、自然の中で生きることの喜びについて、レイチェルの言葉から発見してください。美しい写真も楽しむことができる本です。

レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳 「センス・オブ・ワンダー」 新潮社 1996年

このページのトップへ
このページのトップへ