校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

5月25日おもしろい本を読みましょう(64)フィル・キルロイ 「マドレーヌ・ソフィ・バラ」

2020.05.25

 聖マグダレナ・ソフィアの祝日おめでとうございます。今年はそれぞれの家で祝日を迎えました。世界の聖心の児童・生徒が今日は家でお祝いの祈りを捧げました。皆さんも動画を見ながら祈ることができたと思います。今年の祝日のご絵は、ローマのバチカンのサン・ピエトロ大聖堂の中にある聖マグダレナ・ソフィアの像の写真です。創立者祝日ご絵2020001.jpgサン・ピエトロ大聖堂は教皇フランシスコが日頃おいでになるところで、カトリック教会の中心です。そこに聖マグダレナ・ソフィアの像があることはとてもうれしいことです。大聖堂に行くことがあったら、聖堂の中、正面に向かって右側,入り口に近い所の柱の上の方を見て探してください。昔のシスターたちはそれぞれの修道会の服装に特徴がありますから、それによって見分けることができます。

 今日の本は聖マグダレナ・ソフィアの伝記として最新のものであり、最も詳しいものと言えるでしょう。後書きも含めて575ページにもなる本です。フィル・キルロイは聖心会のシスターで、今も聖マグダレナ・ソフィアについての研究を進めています。この本の特徴は、聖マグダレナ・ソフィアの手紙など当時の記録を丹念に扱うことによって、聖人としてではなく、実際に生きた人としての姿を明らかにしようとしていることです。それなので、聖マグダレナ・ソフィアの弱さや失敗、困難についても詳しく書かれています。これはとても大事なことです。聖マグダレナ・ソフィアの真実の姿にこの本によって近づくことができます。弱さや失敗があっても、聖なる女性として生きることができる、そのことが大事なことです。勇気をもって聖マグダレナ・ソフィアの真実に迫ろうとしています。大部の本ですから、読むのに時間はかかりますが、色々なエピソードを楽しく、驚きながら読むことができるでしょう。

 聖マグダレナ・ソフィアの時代にも感染症の大流行がありました。今回のコロナウィルス感染症の危機にあたって、著者フィル・キルロイは聖マグダレナ・ソフィアがどのように危機に対応したかについて発言しています。聖マグダレナ・ソフィアの時代には1816年に世界的なコレラの流行がありました。10万人以上が死亡したと言われています。そして、1837年にも再びコレラの流行があり、そのときにはイタリアのローマでも事態は非常に深刻でした。聖心会の修道院でも感染者が出て、亡くなった方もありました。そのようなとき、聖マグダレナ・ソフィアは現実的にものごとを考え、具体的に対応していったということです。衛生管理、十分な栄養と休養に心がけ、専門家から正しい知識を得る努力もしたそうです。ローマでは当時も厳しい強制的な隔離が命じられて、市内で人々は自由な移動ができなかったようです。聖心会の修道院は当時ローマ市内に3カ所ありましたが、それらの間の行き来ができず、お互いに心配しながら過ごしていました。

 困難なことが起こったときは、とにかく目の前のことになんとか対応しようとしました。協力して、とにかくやってみる。そこにあるのは、神様が共にいてくださるという深い信頼です。神様への信頼の心をもって取り組むとき、必ずなんとかなる、それが聖マグダレナ・ソフィアの信念だったでしょう。

 このような危機のとき、誰でも不安や心配を感じ、大きな苦しみや悲しみを感じるものです。そして、聖マグダレナ・ソフィアの時代はフランス革命後の混乱や政治的な変化の大きい時代でした。感染症の流行だけでなく、暴力や戦争の被害を経験していたシスターたちや生徒たちもたくさんいました。聖マグダレナ・ソフィアは人の心の苦しみをよく理解し、人々がお互いに信頼して話をすることを大事にしたということです。安心して話をすることができる仲間となること、聖心としてそれを大切にしました。そういえば、児島なおみさんによる聖マグダレナ・ソフィアの絵本にも、聖マグダレナ・ソフィアが修道会を始めたばかりのとき、毎晩、仲間のシスターたちと一緒に楽しく語り合ったという素敵なページがあります。聖心は一つの大きな家庭ということは、このような面も含まれます。安心して話すことができる、聴いてもらえる、それによって、生きる力や希望をみつけることはとても大事なことです。希望の作り手になることを今年の学校目標で目指している私たちにも、大事なことです。

フィル・キルロイ著 安達まみ・冨原眞弓訳 「マドレーヌ・ソフィ・バラ」 みすず書房 2008年

この本の2人の翻訳者は聖心女子大学の教授で、この本は聖心会来日100周年にあたる年に出版されました。

 

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