校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

3月30日おもしろい本を読みましょう(23)上橋菜穂子「精霊の守り人」

2020.03.30

 昨日は3月の末だと言うのに雪が降り、今日も寒い一日となりました。雪の中で桜は凍ったかのようになりましたが、幸い午後1時すぎには雪も止み、解けていってしまいました。とても珍しい美しさでした。

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 今日紹介する本は、セカンドステージ以上の皆さん向けです。本の表紙を開くと、本によってはその内側にも工夫があります。すてきな模様があったり、地図が描かれていたります。物語の本で地図があるとわくわくします。つまり、地図が必要なくらい、その物語は壮大だということだからです。現実の出来事が書かれている本は、その本の内容に合わせて世界地図の一部が掲載されます。しかし、物語の本の地図は空想世界の地図で、現実にはない場所です。だからこそ、地図が必要。主人公や登場人物たちの行動は、地図があってこそ楽しめます。

 上橋菜穂子は、地図が必要なくらい大きな物語世界をいくつももっている作家です。「精霊の守り人」は、そのうちの一つ全10巻となるシリーズの第一巻であり、シリーズ全体は番外編もある長大な作品です。「~~の守り人」と少しずつ異なるタイトルで進んでいきます。主人公は「バルサ」という女用心棒。この物語の世界は独特で、日本でもないし、西洋でもない。時代は遡るので、人々の生活は昔風で、馬に乗って旅をし、科学や機械などはまだ発達していません。バルサはとても強い女性です。用心棒というのは、旅人や商人たちを盗賊や敵から守る役目を果たします。用心棒は実力がなければ務まりません。武器は剣や弓、やりなどの時代設定です。バルサは数奇な生い立ちで、育ての親が用心棒を務めながら、バルサを守り、育ててくれました。それで、バルサは少女でありながら用心棒を志し、育ての父から槍を習います。バルサはとても「かっこいい」。強くて、孤独で、魅力的な人物です。責任感としっかりした判断力があって、男たちの実力世界でも決してひけをとりません。いのちをかけて生きています。そのバルサが色々な出来事に巻き込まれながら、大きな物語が紡がれていきます。その中で、いのちについて、生きることについて、自然と人間の関わりについて考えされられます。

 第一巻を楽しんだ方は、次に進まざるを得なくなります。バルサはどうなっていくのだろうと、きっとこの物語の世界に惹かれていきます。もうすでに読んだ方は本当におもしろかったと共感してくださるでしょう。

 数年前にはテレビドラマにもなりました。漫画にもなっているようです。学校の中高図書館にあるのは単行本ですが、文庫本にもなっています。漫画やドラマも良いですが、原作をお薦めします。

上橋菜穂子 「精霊の守り人」 偕成社  (文庫本は新潮社)

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