校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

3月24日おもしろい本を読みましょう(18)ブレイディみかこ「子どもたちの階級闘争」

2020.03.24

 今日も良い天気ですが、朝の空気は冬のよう。春は少しずつ。

 今日紹介する本はサードステージ生向けです。ブレイディみかこの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は昨年大ブレークしました。鋭いまなざしの少年が描かれた、黄色の表紙が印象的な本でした。昨年の中等科のクリスマスウィッシングの劇にも多大なインスピレーションを与えました。多様性・他人のくつをはいてみる・empathy、といくつかの言葉がこの本から汲み取られて、今の日本と世界を考えるためのキーワードとなっています。28日の夜にはブレイディみかこが出演するNHKのEテレ番組「Switch インタビュー」も放映されました。見た方もあると思います。お人柄の表れる「語り」がありました。

 さて、今回の本はタイトルが衝撃的です。「階級闘争」は子どもたちがすることではありません。それなのに、なぜ?ブレイディみかこはイギリスで保育士として働きながら、文章を書いていました。この本には、そのときの経験が書かれています。今回の「ぼくは・・・」の本の背景となる時期にあたります。ブレイディみかこの息子さんもまだ幼児の頃です。

 「地べた」という言葉でブレイディみかこは自分の立ち位置を表そうとしています。いわゆる「上から目線」でものを見ないということです。人と同じ地面に立って、自分の感じたこと、考えたことに正直に生き、語る。個人として生きているので、何かのために忖度したりしない。大事なことは自分、家族。しかし、自分のことだけ考えているのではなく、まわりで生きている人々の苦しみや悲しみや葛藤をまっすぐに受け取って、どうなっているのだろうと考えながら生きていく。世間的な基準から見れば、持たないものも多いかもしれませんが、自由というものを大切に手の中に持っている方とも言えるかもしれません。自由にはもちろん責任も伴うものです。その責任の生き方もまた自由です。そして、自由は自分勝手ではありません。

 地べたに立ってみると、社会のひずみが小さな子どもたちの中に現れてくる、大人たちの解決できない対立や争いが、子どもたちの中で起こっている、そのことをこの本のタイトルは示しています。イギリス社会の貧困という現実が書かれていますが、では日本では?と考えさせられます。そして、この本を読むと、イギリスの「脱EU」の理由が少しわかるようになると思います。

 ブレイディみかこ「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」みすず書房 2017年

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