トップページ > Spirit of "Mikokoro" > 3月12日 おもしろい本を読みましょう(9)ジャクリーン・ウォースウィック「ヘレンハウス物語 世界で初めてのこどもホスピス」
春の日差しの明るい日となりましたが、空気は肌寒く感じる1日でした。正門をくぐったところの桜の木では、ほんの少しだけ花が開き始めています。
今日紹介する本は中高生向けです。ヘレンとは著者の娘さんの名前です。2歳半のときに大きな病気が判明し、その結果として家庭での介護の必要な生活をしなければならないことになりました。このヘレンの存在をきっかけとして、子どものためのホスピス設立「ヘレンハウス」の動きが始まっていきます。1982年、イギリスでのことでした。このヘレンハウスを先駆けとして、色々な国で子どもホスピスが設立されていきます。私たちの偉大な先輩40回生喜谷昌代さんもこのヘレンハウスから大きなインスピレーションを受けて、東京・世田谷区の子どもホスピス「もみじの家」の設立に向けて大きな貢献をされました。
この本には、母としてジャクリーンさんがどのように娘に関わり、家族としてどのような経験をし、ケアの必要な子どもを持つ親としてどのように感じながらホスピス設立に向けて動いていかれたか書かれています。この本を通して、ほんものの共感力の大切さを感じさせられます。喜谷昌代さんはとても深い奉仕の精神をお持ちの方でした。そして、深い共感力の持ち主でもいらっしゃいました。喜谷さんのインスピレーションの源泉にさかのぼるこの本は、命について、人と「共に生きる」ことの意味について考えさせてくれます。
日本の子どもホスピスの状況については、田川尚登著「こどもホスピス 限りある小さな命が輝く場所」という本もあります。合わせて読んでみると、日本の子どもをとりまく医療とケアの状況について学ぶことができるでしょう。
ジャクリーン・ウォースウィッック著 仁志田博司・後藤彰子監訳 「ヘレンハウス物語 世界で初めてのこどもホスピス」 クリエイツかもがわ 2018年
田川尚登著 「こどもホスピス 限りある小さな命が輝く場所」 新泉社 2019年