校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

中高等科 7月の集会 Be wise. Be creative. No one left behind.

2019.07.13

毎年、夏休み前の最終日は合唱コンクールの余韻の中で迎えます。今回も生徒の一生懸命に歌う姿が目に浮かび、力強い歌声が耳に響いています。今年は涼しい日が続いて夏という実感が薄いままですが、いよいよ7月の最終日となりました。今年はソフィア・バラホール改修工事のため、集会に代えて放送で生徒に話すことになりました。

生徒には長期休みの前にはいつもふり返りをしてもらいます。4月からの自分の歩みをふり返り、何が心に残っているか、自分の問いかけます。学習において、そして、人との関わり、特に友人との関わりでは正直に、相手を思いやることができたかどうか。クラブ活動や委員会では自分の責任を果たすことができたかどうか。新しくチャレンジしたことはあったかどうか。もし、ためらっていた気持ちを乗り越えて、何かにチャレンジすることができたのなら、それは素晴らしいことととらえます。また、心に深く残っていることが何かあるか、それを通して「私」はどのように考えたのか。このようなことをふり返ってみます。

今年度の目標「Be wise. Be creative.」についても考えてみます。「wise」とは賢明さであり、よく考えて行動する、賢い、行き当たりばったりや気持ちだけでないなどの姿勢を表します。合唱コンクールを終えての合同終礼の祈りに、「思慮深い」という言葉が使われていましたが、生徒たちの感覚にぴったりくる言葉に聞こえました。「creative」についても考えてみます。色々な場面でcreativeであったかどうか。たとえば、今回の合唱コンクールは聖心女子大学のマリアン・ホールをお借りしての開催でした。そのような日頃と異なる場面では、その場にふさわしい臨機応変な対応が求められていたので、まさに「wise」で「 creative」なあり方を発揮するべき機会でした。

4月からの生活をふり返って、良いことがたくさん思い出せればすばらしいことです。しかし、うまくいかないことや行き詰まっていることに思い至るなら、それも学びのチャンスととらえます。「wise」に考えて、混乱し、絡まったようになっていることを解きほぐし、うまく行かない原因を正直にみつめてみます。何かこだわっていることがあるのかどうか気づくことができれば、解決につながります。

4月からSDGsにも取り組んできました。6月のみこころの祝日の活動ではディスカッションを行って、自分たちに何ができるか具体的に考えました。大変良い機会となりました。それ以来、高等科校舎の廊下の電灯が消えていることに気づくたびに、この機会を通して高められた意識と協力を感じさせられてきました。職員室前に掲示されている8年生の話し合いの結果にもおもしろいものがあり、一つ一つ見てみると、鋭い生活感覚から生まれる提案がありました。SDGsの考え方では、一つひとつバラバラに見えるかのようなことが関連づけられていくことが重要です。 

SDGsには、国連の取り組みとしてこれまでのものと異なる新しい視点があると言われています。まず、これからの世界をSDGsの考え方で生きるために、今の世界に必要な2つものとして、対話と信頼の回復をあげている人がいます。対話とは人と人が出会って話すことです。SNS上では「いいね」を広く集めることができますが、そこには協調があっても、協力が生まれないと言われます。協力とは一緒に働くこと、歩むことであり、責任をもって関わることです。対話をしているときには、相手を前にして口先だけの言葉は力を持ちません。責任をもって関わることは、「コミットメント」とも言います。責任をもって関わるとはものごとを他人事ではなく、自分の事として受けとめるということです。一方、信頼とは言ったことを実行しようとする所に生まれ、一貫性があるということでもあるでしょう。お互いに誠実に、お互いを大切にし合う関わりのことを指します。

SDGsにはこれらの2つが大切だと言われます。逆に言えば、これらの2つが世界には失われているということになります。そうであるなら、今回のみこころの祝日にディスカッションをしたことの意味は大きいとわかります。ディスカッションとは対話と信頼の活動であり、まさにSDGsにふさわしい活動でした。

さらにSDGsについてこれまでと異なる新しい視点は2点あり、まず、「No one left behind. 誰も置き去りにしない。」そして、「変容: transformation」だと言われます。変化:changeという言葉ありますが、その2つの言葉を比べると、変容は深いところから根本的に変わることを指すようです。たとえば、聖書の中でイエスの姿が弟子たちの面前で変わり、人間であるイエスが神々しい神の姿を帯びるという場面は「イエスの変容」と呼ばれます。変容とは神の恵みの力による変化であり、常識的には考えつかないような深い変化、それも良い方向への変化を表す場合に使います。

今日の聖書朗読では、ルカによる福音書から、「失われた羊を探しにいく羊飼いのたとえ」が読まれました。とことん最後まで本気で、たった一匹の羊を探す羊飼いの姿に、神がすべての人を大切にしてくださるということが表されています。みこころの祝日のミサでもこの箇所が朗読され、誰一人取り残さない、置き去りにしないということがイエスのみこころであるとして、ミサを司式されたアルン神父はSDGsのことも含めて話してくださいました。聖書の言葉は人間の心の世界のことを示すだけでなく、現実的な今の世界にも関わることだと感じることができました。聖書の世界が社会的次元にも広がる理解でした。このように、SDGsの根本的な考え方はイエスの教えを知る私たちになおさらなじみ深いものになっています。イエスの教えからも、SDGsは私たちが実行すべきものだと感じさせられます。

「誰も置き去りにしない」という言葉の通り、一人一人が大事な一人です。この夏休み一人ひとりが神様に見守られて、安全に、学びも活動も豊かに過ごすことを願っています。神様はいつも見守っています。迷った羊を本気で探しにいく羊飼いのように、手を差し伸べています。安心感をもって、勇気を出して、色々なことにチャレンジしてほしいものです。SDGsにも取り組んで、何ができるかcreativeに工夫することを期待しています。世界のすべての人が共に生きる仲間です。  

夏の間にもソフィア・バラホールの工事は進みます。これまでは内部の工事が行われ、音のすることもありましたが、辛抱強く過ごすことができました。これから建物の外回りに足場が組まれ、外側の仕事も始まります。外回りのグランド側の工事も始まり、工事車両の通り道としてグランドの端に鉄板が敷かれることになっています。残念ながら、伐採しなければならない木もあり、今後、別の場所に新たに植えなくてはと考えています。この工事のために、今後も色々と工夫をしなければなりません。いつもと違ったユニークな考えが生徒から出てくることを期待しています。creativeな姿勢を実践するチャンスととらえたいものです。

7月12日、世界の女性の中でマララ・ユスフザイが誕生日を迎えます。マララは現在イギリスで大学生として生活し、今も世界の女子の教育のために活動しています。「One pen, one book, one teacher can change the world.」という力強い言葉を語っているマララは、教育の力を確信しています。教育によって世界を変えることができると信じています。戦争や暴力や、力による支配でなく、一人ひとりが活かされる世界を目指しています。誰かの命令で動くのではなく、一人ひとり考えることが大切にされる世界、いのちが大切にされる世界を創ることを目指しています。

今回の合唱コンクールでは、数々の素敵な言葉が聞こえました。心に響く言葉、生きる力をもたらす言葉がありました。生徒一人ひとりがいのちを活かす言葉を語る人になることを願っています。「死ね、消えろ」というような、人のいのちを大切にしない一方的な言葉を耳にする現実が残念ながらあります。心が痛みます。いのちを活かす言葉は関わりを切る言葉ではなく、つなぐ言葉です。そのような言葉を語り、伝え、読み、聞く、そのような体験をする夏休みになることを願っています。良い本に出会うことも願っています。

世界が本当に平和の方向に向かっていかれるのか、見ていかなければならない厳しい状況に私たちは生きています。日本の社会も今回の参議院選挙でどのようになっていくか、見ていかなくてはなりません。生徒たちは中高生の立場として、自分の生きている世界、社会の状況を自分のこととして感じ取っていってほしいと強く思います。

安全で実り豊かに、よい夏休みとなりますよう祈ります。8年生の奥日光キャンプ、9年生の青森研修旅行、11年生の長崎研修旅行、12年生の黙想会がそれぞれ楽しい学びの時になることを期待しています。また、海外での体験学習・語学研修なども安全で発見が多いものになることを期待します。9月には、それぞれどのような活動であったか報告を聞くのが楽しみです。そして、一人ひとりの生徒からの夏の便りも楽しみです。

Be wise. Be creative. No one left behind!

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