世界の現実に触れ、現地での出会いと交流を通して、より深い学びや考察を得る好機となる体験学習。今回は、第15回目となった「カンボジア体験学習」に参加した生徒たちに、それぞれが実際に見て聞いて交流した、さまざまな体験を通じて感じたことを語り合ってもらいました。

歴史と現状は、密接にかかわっている。

R. K.

ポルポト政権時代の負の遺産といえるツールスレン刑務所、キリングフィールドなどの見学や、都市部と農村部で今を生きる子供たちとの交流から強く感じたのは、歴史と現状がつながっているということでした。

先生

具体的には、どんなつながりを感じましたか?

R. K.

当時たくさんの知識層の方々が虐殺されてしまったことで、今の親世代がきちんとした教育を受けることができず、教育の大切さを認識できなかったこと。そのことによって、今の子供たちまで教育を受けられない環境に陥ってしまっているという連鎖が、すごく印象に残りました。

M. N.

教師や医師といった知識層がいなくなって教育機関や教員が不足してしまったことが、現在抱える貧困などの問題と密接にかかわっている。そのことを、身をもって感じることができたのは、将来社会科の先生になることを視野に入れている私にとって、とても貴重な体験でした。

A. K.

私は、教育を受けるという概念を持たない子供たちが少なくないことに驚きました。特に農村部ではフリースクールなどに通う機会があっても、家庭の事情でいつのまにか来なくなってしまう。継続して教育を受けることが難しい人たちも一定数いるんだ・・・、とショックを受けました。

Y. N.

一方で、裕福な家庭に育っている都市部の高校生は、理想のカンボジアのためには教育が大切なことを知っているはずなのに、自国に貢献するよりも海外で活躍する道を選びたがる傾向にあり、農村部の子どもたちは「教師になりたい」「家族のためにお金を稼ぎたい」と思ってはいても、実際にどう行動すればいいのかわからない状況にあるようでジレンマを感じました。

M. N.

ただ、決して恵まれているとはいえない環境の中でも、自分の未来を自分で切り拓いていこうという意志が、小さな子どもから、中学生、高校生まですごく見られました。ポルポト時代の実体験を語るなどガイドをしてくださったチア・ノルさんの「辛いことがあってもカンボジアの人々が強く生きているように、強く生きてください」という言葉もとても印象に残っています。

Y. N.

私も、チア・ノルさんの言葉は心の支えになっていますね。普通の観光では行かないような場所にも足を向け、普段は聞けない話が聞けたことが大きかったと思います。首都プノンペンなどの都市部から小さな村々まで訪れたからこそ感じられることがたくさんありました。

R. K. さん
M. N. さん
ポルポト時代に父や兄を殺害された体験を語るなど、7日間に渡ってガイドをしてくださったチア・ノルさん
お互いの国の文化の紹介や、エネルギー問題のディスカッションなどを行ったアンコール高校

未来をよくするために、必要なこと。

A. K.

裸足で物売りや物乞いをしている子どもたちの姿を目にした時には、「支援したい」という感情と、支援するだけでは「その子のためにはならないんじゃないか」という葛藤が生まれて心が苦しくなるような体験もしました。でも「自分ができることから、はじめればいいんです」というチア・ノルさんのひとことで、これから自分がどうしていけば良いのかが少し見えてきた気がします。

R. K.

私は今回カンボジアの厳しい状況を見て、逆に自分の国のことも真剣に考えていかなければいけないという思いも芽生えました。将来的に海外での仕事に就いてみたいという意識もありましたが、まず自分の国である日本についても、今一度考え直さなきゃいけないなというのは、すごく感じました。

先生

現地の方々との交流という視点からは、どうでしたか?

M. N.

言葉はいらないんだな、ということですね。もちろん現地語を話せれば、もっと伝えられることもたくさんあったのかもしれませんが、それ以上に笑顔で、自分から声をかけたり、小さい子にはいっしょに遊ぼうとボールを投げたり、大縄をまわすだけでつながれる、あの感じがすごくいいなと思いました。

A. K.

私は、いっしょに折った折り紙を持ち帰ってくれるかどうかの差が印象的で。幼稚園とストリートチルドレン支援施設の子どもたちは持ち帰ってくれたのですが、アンコールクラウ村の子供たちは折り紙には目もくれず、持ち帰っていくのは生活用品だけ。明日の生活に余裕がないということが子供たちの態度からもわかるんだなと思いました。

R. K.

交流に関しては、本当に楽しいことばかりでしたが、自分自身への反省があります。多様性を理解することが大切だと認識していたはずなのに、村にひとつしかないトイレやその衛生状態などを目の当たりにして、これまでの価値観から抜け出せていない自分を感じたとき、ちょっと恥ずかしく思い、反省しました。

A. K. さん
Y. N. さん
虐待や人身売買により孤児となったストリートチルドレンなどを保護するクルーサートゥメイ施設
日本からの支援物資を届け、子供たちとの交流を行ったアンコールクラウ村

この体験は、自分だけのものじゃない。

先生

カンボジアで体験してきたことを、今後どのように活かしていきたいですか?

A. K.

今までの私もそうですが、世界の諸問題を知識として知ってはいても、なんとなく「他人事」ととらえている人たちの価値観を少しでも変えられたらな、と。だから、まず自分にできることから、今回得た貴重な体験を話すことからはじめたいと思います。

R. K.

今後、支援をする立場に立ったときには、けっして上から目線にならず、同じ立場に立って相手の気持ちを思いやることを大切にしていきたいです。しっかりと多様性を理解しながら、今後の人生にもつなげていきたいなと思います。

M. N.

カンボジアで学んだことを発信することはもちろん、実際に見て聞いて人と会ってはじめてわかることがあるということも伝えていきたいと思います。また、たくさんの出逢いから学んだことを胸に、私自身の未来に対しても、もっともっと積極的に強く生きていこうと思いました。

Y. N.

今回学んだことや、みんなと振り返りの時間で共有しあった葛藤とかを、これからもずっと継続して考え続けていくことが大切だと思うので、今回学んだことを一生の糧として生活していきたいと思います。

アンコール遺跡の一角で柔らかな笑みをたたえる四面仏が有名なバイヨン寺院
食材から衣類、お土産まで、交渉によって値段が決まるオールドマーケット
 
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