校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

4月8日 高等科入学式・始業式 学校目標「希望の作り手になる ~変化を生み出す・変容を生きる~」

2021.04.08

 高等科入学式・始業式は、午後に3学年がソフィア・バラホールに集まる形式で行われました。10年生代表の新入生の言葉、式後の生徒会による高等科生活についての話など、生徒からの発表も高等科生らしくよく考えられたものでした。学校生活を始められるという期待と意気込みが感じられるスタートとなりました。

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赤の学年の皆さん、高等科入学おめでとうございます。11年、12年の皆さんも進級おめでとうございます。そして、今年はご復活と共に新学年を始めます。ご復活おめでとうございます。

 昨年の今頃は休校期間でした。今年このようにして新学年が始められることは大きな喜びです。学校生活ができるということは皆さんにとり基本的なことですが、それが実現できることにまず感謝しましょう。世界の中には色々な状況におかれている国があります。

 今年度は学校目標を、昨年に続いて「希望の作り手になる」を心におきながら、「変化を生み出す、変容を生きる」ことに力を注ぎたいと思います。「 Being artisans of hope. 希望の作り手になる」という昨年度の目標は世界の聖心と共有する大きな目標でしたし、コロナ禍を生きる私たちにふさわしいものでした。そして、1年では達成できないほどの大きな目標でした。引き続き感染流行が心配な状況にある中、今年度も「希望の作り手になる」ことを目指すことは大事なことです。そして、今年は変化・変容に注目し、主体的に進んで行くことを目指します。

 新型コロナウイルスの流行によって、世界は大きな変化の流れの中におかれています。人間の計画や考え通りにならないいのちの連鎖によって、世界は変わらざるを得ない状況におかれています。思いがけなさということでは、私たち人間は受け身的にならざるを得ない面もありますが、状況に流されるのでなく、しっかりとした自分の考えを持って生きていくこともできます。

 高等学校の生活は皆さんそれぞれが自分の意思で選んだ、主体的に生きる場です。高等科の生活は自ら進んでチャレンジすることで大きく広がります。様々な場が皆さんのことを待っています。だんだんと高度になる学習は、受け身でいると重荷になっていきます。しかし、自ら疑問をもって問いかけたり、確かめたり、追求していけば、奥深い世界を開いてくれます。数学や理科、歴史、英語、様々な教科を通して、私たちの住む世界はこのようなところなのだと皆さんが実感をもって感じ、理解する手応えを与えてくれるでしょう。学ぶことで皆さんの内面の世界は自ずと変化していきます。

 今年度は、特に、失敗を恐れずチャレンジに向かってください。そこに変化を生み出す力があります。失敗は大きなチャンスです。なぜなら、失敗を通して大きな問いが生まれるからです。何か失敗したとき、私たちは「どうしてこうなってしまったのだろう?よく考えて、準備もしたはずなのに、なぜ、こんなことに?」と、がっかりしたり、驚いたりしながら問いかけます。この問いが貴重です。失敗のくやしさに負けず、この問いにしがみつき、考える。そこに新たなもの、変化が生まれます。何かにチャレンジして巧くいき、成功したら、それはうれしいことです。しかし、巧くいかなかった時、失敗した時こそ、それまでに見えていなかった新しいものが開ける時です。冷静に、謙虚に現実を見つめて、次の一歩を踏み出しましょう。赤の学年の皆さんを始めとして、11年、12年の皆さんも失敗から生まれる問いを大切にして前進してください。

 変化を生み出すことはそれまでと異なる流れを作りだすことです。新しい視点、新しいやり方に取り組むことは面倒なことかもしれません。しかし、価値あることです。人とは違う何か、今まで手をつけてこなかったこと、誰も気づかなかったこと、そのような何かを、小さなことからでも手がけ始めていきましょう。皆さんの中にあるクリエィティブな力に期待しています。

 この春休みの間にも世界は動いています。変化を求める強い動きも生まれています。たとえばミャンマーでは混乱が続いており、ほんものの変化を求めて声を上げている人々がいます。マ・ティーダという一人のミャンマーの女性の生き方に触れる機会がありました。この方は外科医師であり、ジャーナリストでもあり、人権活動家で、かつて1990年代のミャンマーで政治犯として数年にわたって拘束されていた経験がある女性です。自由が奪われた生活の中で、この方は仏教徒として瞑想の祈りをすることで心の自由を保ち、主体的に生きることを決してやめませんでした。心の自由は自分からあきらめてしまわない限り、誰からも奪われることはない、これを信じて生き抜いていきました。祈ることはとても大きな力です。神さまに語りかけることで、私たちは力をいただきます。それが今年の目標にある変容ということです。神さまと共に生きようとするとき、私たちは深く変えられていきます。マ・ティーダについて調べ、講演やNHKのインタビュー番組を通して、彼女自身の言葉にぜひ接してください。

 イエスのご復活も変容の時です。イエスの人間としてのいのちは十字架の上で死を経験しますが、神の新たないのちへと変えられていきます。復活はいのちの変容です。今回の聖書朗読ではイエスの復活の場面が読まれます。よく耳を傾けてください。ご復活の聖書の場面では女性が活躍するので、私はうれしく感じます。弟子たちは十字架を恐れて逃げてしまいますが、女性たちはイエスを大切にする気持ちを強く持ち続け、イエスの死を見届け、埋葬します。そして、改めて墓を訪れて、イエスに奉仕しようとします。しかし、墓は空になっており、イエスがいません。女性たちは「なぜ?何があったの?」と驚き、大きな問いに途方にくれてしまいます。その時に神の使いとおぼしき存在から、イエスの復活を告げられます。女性たちは言われます。「イエスがお話しになったことを思い出しなさい。こう言われたではないか。」そこで、女性たちはイエスの言葉を思い出します。「思い出す」とは、女性たちの心の強さや柔軟さを表しているかのようです。大きな問いから逃げずに、それを抱えている時、神さまの恵みによって心の深みに答えが与えられます。そして、この女性たちは変化していきます。どのように変わっていったか、聖書の言葉をよく聞いてください。この女性たちの変容はミャンマーのマ・ティーダの姿にもつながるように感じられます。

 今年度の学校生活を皆で大切にいたしましょう。感染防止対策には続けて努めましょう。「私」の健康を守るための心がけが、全体の健康を守ります。今年度の学校生活が皆さんの生み出す数々の変化に満ちて、学校全体にも、皆さん一人ひとりにも、実り多いものとなることを願っています。

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