校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

6月3日 おもしろい本を読みましょう(70)リンドグレーン 「やかまし村はいつもにぎやか」

2020.06.03

 今日もファーストステージの皆さんに楽しい本を紹介します。リンドグレーンの「やかまし村」シリーズは本当に楽しい物語です。今日の本は3作目にあたります。昨日紹介したケストナーも子どもの心をよく知っていて、子どもを大切にしている作家でしたが、リンドグレーンも子どもの心をわかることができる、いきいきした心の持ち主だと感じます。

 やかまし村には子どもが一人増えて7人になっています。一人っ子だった男の子オッレの家に妹が生まれたのです。ケルスティンという名前です。スウェーデン語の名前は美しいひびきがします。お兄さんになったオッレは妹をとてもかわいがっています。まだ小さいのでお話はできませんが、元気いっぱいの子どもです。

 主人公のリーサは9歳になりました。やかまし村の生活は、今の皆さんの生活と大分ちがいます。あるとき、やかまし村を車で訪れてきた親子がいました。美しい風景を見に来たのです。どうやら車がある時代のようですが、やかまし村にはないようです。車で来た人たちをリーサたちは家で作ったサクランボジュースを出して、親切におもてなしします。サクランボジュースはどんな味のするものなのでしょう。飲んでみたくなりました。今までに聞いたことがありません。日本にはないように思います。ジュースにできるほどサクランボがとれるとはうらやましい!日本のサクランボはとても美しいですが、たくさん食べることはできません。さて、車で来た人たちは、町に住んでいる人たちです。やかまし村の生活はたいくつなのではないかと思って帰っていきます。リーサはそれを聞いて納得できません。やかまし村の生活はとてもおもしろいと思っているからです。

 リーサたちの生活には、テレビはありません。ゲームもありません。近所にすてきなお店もありません。ディズニーランドのようなテーマパークもありません。でも、自然の中に遊ぶ場所がたくさんあります。湖に行ってザリガニ取りをしたり、大きなたき火をしたり、お父さんたちとキャンプしたりできます。春にたくさん子ヒツジ生まれたときに、その一匹をお母さんヒツジの代わりに育てさせてもらうこともできます。でも、それはお母さんヒツジが育てられない理由があるときだけです。学校の行き来に長い時間歩かなければならないことは大変ですが、途中に道草して遊べるところがたくさんあります。ピアノやバレエや水泳を習うことはできませんが、その代わりに遊ぶ時間がたくさんあります。

 リーサと一番の仲良しのアンナは「ごっこ遊び」をすることも大好きです。日本の3年生はどうでしょう。ごっご遊びはもっと小さい子のすることです、と思っているでしょうか。皆さんはどうですか?でも、リーサとアンナはとても楽しそうに「お姫さまごっこ」をします。それにもってこいのすてきな場所があるのです。まわりにすてきな木がしげっていて、花も咲いていて、小川も流れています。そこに二人ですわって、ふた子のお姫さまになったつもりで、ユキノシタ姫、サクラソウ姫とすてきなお花の名前をつけて、お姫さまらしくすてきな言葉でお話しします。そのときに小さなカエルをみつけて、二人の物語はもっとおもしろくなりました。ヨーロッパには、カエルは魔法にかけられた王子様で、カエルにキスするとその魔法が解けて王子様にもどれるという古くから伝わっているお話があります。リーサとアンナはそのお話を思い出して、みつけたカエルが王子様だったらどうしようと考え始めたのです。さて、困りました。カエルにキスするなんて大変なことです。でも、そうしないと王子様は現れません。そして、お姫さまは二人いるのに、王子様かもしれないカエルは一匹だけです。どうなったと思いますか?読んでみてください。リンドグレーンは本当に子どもの心を知っている人だと思える終わり方が待っています。

 子どもたちはたくさん笑います。自由な時間がたくさんあって、色々考えて遊ぶことができます。しなければならないお手伝いもありますが、それでも自分たちで考えて、自由にできることもたくさんあります。町の子どものようにすてきなものをたくさん持っているということはありませんが、想像したり、大切にしたりする楽しみがあります。

 やかまし村というところがあったら、夏休みにしばらく泊めてもらいたいと思います。リーサや子どもたちと一緒に湖や森に行って、自由な時間を過ごしてみたいです。子どもたちと一緒に笑ったら、きっととても楽しいでしょう。

リンドグレーン作 大塚勇三訳 「やかまし村はいつもにぎやか」 岩波書店 岩波少年文庫

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