校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

6月2日おもしろい本を読みましょう(69)エーリヒ・ケストナー「ふたりのロッテ」

2020.06.02

 今日の本は主人公が9歳ですから、ファーストステージの皆さんにお薦めします。ロッテは主人公のおんなの子の名前です。日本ではロッテはお菓子の会社の名前として知られているかもしれません。このロッテはドイツのミュンヘンにお母さんと一緒に住んでいます。金髪で三つ編みのおさげの髪型をしています。このロッテが大冒険をします。今日の本は先週紹介した中村桂子さんの「ふつうのおんなの子のちから」に取り上げられていた本です。

 物語は山や湖のある美しい村に建つ、夏休みの子どもの家で始まります。そこにはおんなの子たちが楽しいお休みを過ごすために集まってきていました。ロッテがバスに乗ってその家に着くと、なんと自分にそっくりのおんなの子がそこにいました。ルイーゼという名前でした。ふたりはそれぞれ相手を見て、驚いてしまいます。まわりにいたおんなの子たちも皆びっくりしてしまいます。ルイーゼはおどろいて、その上にプンプンに怒ってしまいます。どうして自分にそっくりな子がいるんだろう!と訳がわからなくて、怒っているのです。ロッテは困ってしまいます。

 実はこの二人は双子でした。でも、一度も会ったことはなかったのです。ルイーゼはウィーンという町に住んでいました。二人のお父さん、お母さんは二人がとても小さい時に、お別れしたのです。ルイーゼはずっとお父さんと一緒に生活していて、お母さんに会ったことはありません。お父さんは音楽家です。ロッテは出版社で編集の仕事をしているお母さんと住んでいて、お父さんのことを知りません。会ったばかりのときは、ルイーゼはロッテに少し意地悪でしたが、自分たちが双子だと気づくと二人はとても仲良くなって、いつも一緒に過ごしました。当たり前ですね。それまでいることも知らなかった自分の姉妹に、思いがけず出会うことができたのですから。夏休みの終わりが近づくと二人はお別れしなくてはなりません。二人は村の写真館に行って、二人一緒の写真を記念に撮ってもらいました。写真屋さんもそっくりな二人のおんなの子たちにびっくりしてしまいます。

 いよいよ子どもたちが自分の家に帰る日がきました。ロッテとルイーゼもそれぞれ反対方向に向かって出発する列車に乗り込みます。さて、これからこの二人はどうなるのでしょうか。ロッテとルイーゼの大冒険が始まります。二人はそっくりですから、入れ替わって、ロッテはお父さんのところに、ルイーゼはお母さんのところに帰っていったのです。それからどうなったかは自分で読みましょう。ロッテはとても賢い子どもです。よく考えて、一生懸命お父さんを大切にします。ルイーゼは元気な子どもです。一生懸命お母さんを助けようとします。ロッテもルイーゼも今は離ればなれに住んでいますが、本当は二人で一緒に生活したいのです。でも、子どもだから、自分たちの考えだけで好きなようにはできません。それでどのようになっていったのでしょうか。

 この本が書かれたのは、今から70年ほど前のことになります。世の中の考え方は今と異なるものがありました。家族に対する考え方も違います。この本はハッピーエンドで終わりますが、今の世の中だと同じ形がハッピーとは言えないかもしれません。70年前とは違う家族の幸せの形がたくさんあります。この本の考えは古いかもしれません。しかし、この本にはとてもおもしろいエピソードがたくさんあって、ロッテとルイーゼという二人のおんなの子の気持ちがいきいきと書かれています。ケストナーという作家は子どもの心を大切にした人だということがわかります。大人の都合で子どもを扱わないでください、ということがケストナーの考えていることの一つです。

 この本の中に出てくる、大人のおんなの人の生き方も様々です。本当に幸せな生き方は、その人がしっかりと自分らしく生きていることだと感じます。ロッテとルイーゼの冒険を読んでみてください。

エーリヒ・ケストナー作 高橋健二訳 「ふたりのロッテ」 岩波少年文庫 

 

 

 

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