校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

5月21日おもしろい本を読みましょう(62)有沢 螢「虹の生まれるところ」

2020.05.21

 コロナウィルスのために外出が制限されて、私たちは不自由な生活を続けてきています。感染を防ぐために、人との接触を最小限にしています。友だちに会えないことはとても残念なことです。それでも、電話をかけたり、オンラインでつながったりする、替わりの活動もあります。しかし、いま人との接触ができないことで、とても困っている方たちがいます。それは、高齢者や、病気や障害のために介護を必要としている方たちです。介護は別の形で替わりになるものがありません。

 今日の本の著者は身体機能に障害があり、動くことができません。しかし、短歌を詠み、文を口述して、介護者や周りの人にそれを書き取ってもらうことで作品を生み出しています。この本はカトリックの月刊雑誌「福音宣教」に連載された文章を一冊にまとめたものです。著者は毎月の季節の移り変わりを感じ取りながら、とても豊かな心で、記憶をたどり、新しい経験を重ね、今生きていることの意味を深く味わって、言葉にされています。差し挟まれる短歌が、著者の心を一層凝縮した形で伝えてくれます。

 もし~~だったら、と私たちは時々想像してみることがあります。もし、明日よいお天気だったら、明日から学校に行けるのだったら、何をしよう、どうなるだろうと考えてみることができます。しかし、想像してみるのもとてもむずかしいことがあります。その一つは、病気のために急に身体から動く機能が失われてしまうことです。この著者は、突然の病気によって、想像を絶した状態で生きなければなりませんでした。なぜ生きていくのでしょう。神様は何を望んでいらっしゃるのでしょう。著者は心の深くに問いかけ、魂から言葉を汲み出して語っています。

 コロナウィルスという新しい現象に出遭っている私たちも、いま新たに生きる意味を問われています。この本の言葉に耳を傾けるとき、私たちも心の奥に新たなものをみつけることができるかもしれません。

有沢 螢 「虹の生まれるところ」 オリエンス宗教研究所 2020年

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