校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

4月9日おもしろい本を読みましょう(32)ヨハネによる福音書 13章 聖木曜日の朗読

2020.04.09

 今日は中高等科の皆さんは新しいクラスの発表がありました。Web上でHRも開設されました。新しい学年がいよいよ始まりました。登校はできませんが、新しいクラスの先生・友だちと一緒に今年度の学校生活を始めましょう。今までと大きく異なる特別の年となるでしょう。初等科の皆さんにも新しい教科書が家に届いていると思います。どのような勉強が始まるのか楽しみに教科書を見てみてください。

 さて、キリスト教では12日の日曜日がイエスのご復活、イースターです。今週はそれに先立つ「聖週間」、そして今日からはとても重要な最後の3日間が始まります。今日は「聖木曜日」です。カトリック教会は今年は2月から新型コロナウィルスの感染防止としてミサを行っていませんが、普通の年であれば、今日からは夕方に各教会で特別な典礼を行います。典礼とは、ミサも含めての祈りの式です。その中で、ご復活に向けてイエスの生涯の最後を記念します。今日の聖木曜日はイエスの最後の晩餐の記念です。今日は本の紹介に代えて、典礼の中で読まれる聖書の箇所を紹介します。聖書のことばをじっくり読んでみたらどうでしょうか。

 十字架の上での死に先立って、イエスは弟子たちと一緒に「過越祭(すぎこしさい)」の夕食をします。これが弟子たちとの最後の食事となります。そして、ミサは、この食事でイエスがパンとブドウ酒を弟子たちと分け合った出来事を記念しています。

 さて、聖書は不思議な本です。まず、昨日紹介したギリシア・ローマ神話のように、長い時間かけて成立したという特色があります。だから、聖書全体の作者という存在はいません。特に、旧約聖書の最初の方の部分は、言い伝えられてきたことが少しずつまとめられて、書かれたものとなっています。誰が書いたか名前はわかりません。しかし、長い時間をかけて大切に言い伝えられて、大事なことが受け継がれています。新約聖書でも、福音書と言われる部分はマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネと4つあり、その4つの中で、同じ話がくり返し出てきたり、同じようで少し違っていたり、順番が違っていたり、その福音書にしか書かれていない話だったり、他の本とは異なる特徴があります。聖書がどのような書物であるかは、少しずつ学んでください。とてもおもしろいことがたくさんあります。そこで、最後の晩餐について考えてみると、マタイ・マルコ・ルカによる福音書にはミサで再現されるパンとブドウ酒の場面が出てきますが、ヨハネによる福音書にはそれが出ていません。ヨハネによる福音書では過越祭の夕食の場面はありますが、他の福音書にはない、特別の出来事が書かれています。それが上の画像にある場面です。

 この絵は13世紀から14世紀にイタリアで活動したジォットという画家の作品です。人物は何人見えますか?真ん中にいる赤い衣服の人も含めて12人です。真ん中の人はイエスです。では、まわりの人たちは弟子たちということになります。なぜ11人しかいないかは考えてみましょう。ここでイエスは何をしているのでしょうか。左手で誰かの足をつかんでいます。変な動作です。イエスは膝をついて、この人の足を洗っているのです。イエスの後ろにいる人をよく見ると、サンダルをはこうとしているか、脱ごうとしているかしています。そして、立っている人は水差しを持っています。この絵はヨハネによる福音書13章にある過越祭の夕食の場面で、イエスが弟子たちの足を洗うエピソードです。

 イエスが弟子たちの足を洗おうとするので、弟子たちはびっくりして遠慮しようとします。でも、イエスは特別な意味をこめて、弟子たちの足を洗います。イエスはこのように言います。「主であり、師であるわたしがあなたがたの足を洗ったのだから、あなたがたも互いに足を洗い合わなければならない。」とても大切なことばです。上下関係なく、お互いに大切に仕え合なさいというという教えです。ヨハネによる福音書はパンとブドウ酒のことは敢えて書かずに、こちらの出来事だけを書いています。パンとブドウ酒を通してイエスが示したかったことと、このイエスが弟子の足を洗う出来事はつながっているということを表したかったのでしょう。イエスは自分の行動を通して弟子たちに模範を示しています。

 聖書を開いて、ヨハネによる福音書を見つけ、この箇所を読んでみましょう。ご家族と一緒に役割を決めて読んでみるのもおもしろいと思います。説明の部分を読む人、イエスの役、ペトロの役と決めて読んでみたらどうでしょうか。マルコやマタイによる福音書の過越の夕食の場面を探して読んでみると、ミサとのつながりがわかってきっとおもしろいでしょう。

 過越祭について知りたい人は旧約聖書の出エジプト記12章を見てみましょう。ユダヤの人々が大切に受け継いできた歴史がわかります。

 

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