校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

4月7日おもしろい本を読みましょう(30)ル・グゥイン「影との戦い ゲド戦記1」

2020.04.07

 今日も学校はひっそりとしています。コロナウィルス感染症は大きな脅威です。非常事態宣言が東京にも出されるようです。一層責任をもって自分の健康を守り、社会の一員としてふさわしい行動をとることが求められています。一日も早く安心な生活ができるように祈りながら過ごしましょう。そして、楽しいこともみつけて、心配や不安にとりつかれないようにすることも大事です。

 今日紹介する本はセカンドステージ以上の方々向けです。この本にも地図がついています。シリーズになって発展していく壮大な物語です。人にはそれぞれ名前があります。名前はその人を表す重要なものです。皆さんの名前はどなたがつけてくださいましたか?名前の由来について、ご家族に聞いてみたことがありますか?名前の意味や音の響き、文字の組み合わせをどなたかが心をこめて考えてくださったことでしょう。子どもが生まれたらどのような名前がつけられるか、みなわくわくします。

 この本のタイトルにある「ゲド」は主人公の少年の名前です。この物語の世界では名前がことさら重要な意味をもっており、ふつうの生活での呼び名と、誰にも簡単に明かしてはならない、その人に与えられている本当の名前があることになっています。本当の名前とは、その人が何者であるかを示す大事なもの。ゲドは自分の本当の名前を知らなければなりません。自分の生き方に関わる冒険の旅に出ることになります。

 「影との戦い」とはどのようなことでしょうか。ゲドの敵は誰だったのか。物語としてとてもおもしろいだけでなく、考えさせられる本です。「ゲド戦記」としてシリーズで読んでいくと、最後の本ではゲドは老人になっています。そして、物語の中で女性の存在がだんだんと大きくなっていきます。作者自身にも物語を書くということは、始めに自分が考えもしなかった世界へと踏み込んでいくことなのかもしれません。その物語世界がほんものであればあるほど、物語の世界は深く、厚みのあるものとなっていきます。「ゲド戦記」はそんな広大な世界を作り上げています。ファンタジーが好きな方は必読。きっと引き込まれるでしょう。翻訳も秀逸です。

アーシュラ・K.ル=グウィン作 清水真砂子訳 「影との戦い ゲド戦記1」 岩波少年文庫

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