校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

3月27日おもしろい本を読みましょう(21)安野光雅「旅の絵本」

2020.03.27

 学校の桜は満開に近くなりました。今日は風が強いので、ちらほら散ってしまう花びらもあり、残念に感じました。暖かい日には外に出て、春の花々を見つけたいものですが、くれぐれも行動には気をつけて、人混みを避けるようにしてください。今回の新型コロナウィルスは、若い世代の人たちはたとえ感染しても発症せず、本人は気づかないこともあると言われています。そのために、知らないうちに人にうつしてしまうこともあり得るとも言われています。昨夕は、東京都知事だけでなく東京に隣接する県の知事も共同で、外出の自粛を訴えていました。私たち一人ひとりの行動が、全体の動向に関わっていることを自覚するよう呼びかけられています。

 今日紹介する本はどの学年の方でも楽しめます。安野光雅は緻密な絵が印象的な絵本作家です。静かな雰囲気が絵から伝わります。そして、だまし絵など、細部にこだわった工夫が凝らされた作品もあります。

 「旅の絵本」は何度も見て楽しむことができます。この本には文章はありません。絵だけを見て、自分でストーリーを作ることができます。画面いっぱいの風景の中に、一人の旅人が馬に乗って旅をする姿が描かれています。画面のどこにこの人物がいるか、よく探してみないとわかりません。そして、この旅人のまわりには、人々の様々な生活が描かれています。農家や町、大人、子ども、働く人、楽しんでいる人、様々な人々が描かれています。どこなのか、時代はいつなのか、絵から想像してみるしかありません。そして、さらによく見てみると、どこかで見たような人の姿が目に入ります。それから、何かの物語の一場面を思わせる情景があるようにも見えてきます。そうなのです。この絵本には、発見の楽しみがあるのです。何の説明もないので正解かどうかわかりませんが、とにかく自分で「こうかもしれない」と想像してみる楽しさがあります。誰かと一緒にこの本を見てみるのも楽しいでしょう。それぞれに見つけるものが違うかもしれません。見るたびに見つかるものがきっと増えていきます。

 この絵本はシリーズになっています。各巻、同じ旅人が旅していますが、風景をよく見ると、そこに描かれているものから、それぞれどこかある国がテーマとなっているらしいとわかります。安野光雅も各地を旅をして、心に残った風景を描いたのかもしれません。私にもこの本は深い思いのある本です。シスターとなるずっと以前に買い求め、転勤の引っ越しの時にもなくさないように大切にし、何回もくり返し見て楽しみました。しかし、2011年の東日本大震災の後、被災地に本を寄贈する活動があったときに、被災地の子ども達に楽しんでもらいたいと思って送りました。手放してしまうのは残念でしたが、今でも私の心の中で、この本の旅人は緑いっぱいの風景の中を馬に乗って旅をしています。きっと皆さんの心にもずっと長く残る絵本となります。

 安野光雅 「旅の絵本」 福音館書店

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