校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

3月26日おもしろい本を読みましょう(20)中満 泉「危機の現場に立つ」

2020.03.26

 昨夕、小池都知事が記者会見を行い、東京都が新型コロナウィルスの感染拡大における危機的状況にあることを都民に向けて発信し、不要不急の外出を控えるようにと呼びかけました。いま私たち一人ひとりに改めて慎重で賢明な行動が求められています。皆さんはこれまで健康に過ごしてくることができましたが、いま一層の注意を払って生活しましょう。今度の週末にも外出を控えるよう求められていることを真剣に受け止めましょう。行動の範囲が制限されているのは辛いことですが、4月から学校が再開できるように、私たち一人ひとりが心を込めて生活したいと思います。

 今日紹介する本はサードステージ生向けです。3月7日に「聞き書 緒方貞子回顧録」をこのブログ上で紹介しましたが、このたびこの本が文庫本化され、多くの人に手に取りやすいものとなりました。そして、この文庫本に、今日紹介する本の著者である中満泉が新たな解説を書いています。中満泉は現在国連で事務次長、軍縮担当上級代表を務める日本女性の国連でのトップであり、緒方貞子さんの元で薫陶を受けて仕事をされた経験の持ち主です。緒方さんの回顧録に解説を寄せられるのに、実にふさわしい人物と感じられます。

 「危機の現場に立つ」はすでに皆さんに朝礼の場で紹介した記憶がありますが、今回改めて紹介します。この本には、どのようにして国連で働くようになったか自身の経験を記しながら、若い人々に向けて、国際的な仕事に就くために考えてほしいことが書かれています。国際的な仕事に就くために必要な学問的背景、生きる姿勢、行動力などが重要なことがらですが、しっかりした判断力があることも非常に重要なこととされています。タイトルに「危機の現場に立つ」とあるように、様々な国際的な仕事がある中で、中満泉は難民支援の現場において厳しい判断を求められる任務を経験されています。その経験から生み出されているこの本は読み応えがあり、学ぶところも大きいものです。判断力については、自分の中にどのように核心を構築し、実践していくか、「モラルコンパス」という言葉で表現されています。この言葉の持つ意味と重みを本書からぜひ学んでほしいと思います。

中満 泉 「危機の現場に立つ」 講談社 2017年

 このたび「聞き書 緒方貞子回顧録」の編者の一人、野林健氏が文庫版をご恵贈くださり、中満泉氏の解説についてお知らせくださいました。心から感謝いたします。

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