校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

10月4日 中高等科後期始業式

2019.10.09

10月を迎え、後期を始めました。今回も聖堂に集まり、後期の生活に取り組む気持ちを新たにしました。

~~**生徒への話**~~

 新しい気持ちでここに集まっていると思います。終業式から1週間という短い間でしたが、ふり返りの時をもつことができましたか?ふり返って見えてきたものは何だったでしょうか。

 これから始まる後期に期待をもって取り組もうという気持ちであることを期待しています。前期にうまく行かなかったことに気づいている人は、後期はそれを繰り返さず、このようにしていこう!と思っていれば、きっと道が開かれるでしょう。

 前期通知表も渡されます。心配な気持ちもあるかもしれません。それは自然なことではありますが、不安や心配に振り回されないことは大事なことです。通知表をもらう時には、どうぞまっすぐに、逃げずに、弱点はしっかり受け取り、同時に、ほめられることがあったらそれもまっすぐに受け取ってください。神様はいつも皆さんと共にいてくださいます。

 人間の心は不思議なものです。考える力を持つと同時に気持ちも抱えています。これら2つの異なる働きが同時進行しています。気持ちと考えのバランスがとれていればしっかり歩めます。しかし、不安や心配に陥っているときは、気持ちの働きだけが大きくなっています。そのようなときは自分では考えているつもりでも、実際には落ち着いて考えてはいないことも多いものです。考えは悪い方にばかり向かってしまい、正しく考えることができません。不安にとらわれているときには、ものごとを正しく見ていません。悪い方ばかり見てしまったり、偏って考えてしまったり、思い込みにとらわれます。そのような時には、自分本来の力が出せなくなります。

 不安な気持ちが大きい時は、何か落ち着かない、嫌な感じがするものです。その時に、自分の気持ちに名前を付けるつもりで「私は今、不安な気持ちだ」と認めてみると、すっきりして自分らしさをきっと取り戻せるでしょう。

 後期も今年度の目標 "Be wise. Be creative."を心にとめて過ごしたいと思います。

 前期の始めにならって、後期の始めにも3人の女性を紹介します。日本の社会では、女性の賢明さが求められています。つい先日、最高裁判所判事に岡村和美さんが任命されました。16名の判事のうちの2人目の女性です。日本の最高裁判所では、女性が3名以上になったことがないそうですが、この2月に一人の女性判事が退任されて以来、女性判事が一人になってしまっていたところ、やっと新たに女性判事が一人任命されて2人になりました。2名という数をどのように考えますか?「法曹界をめざす女性は毎年増えており、女性判事も増えていくと考える」、と岡村さんはまだ数少ない女性裁判官として責任をきっと感じながら、後に続く若い女性たちに期待しています。この方は様々な経験の後にこの任務につかれました。「すべての仕事はつながっており、過去の経験に助けられたと思うことが多かった」とも言っていらっしゃいます。中高生の皆さんはこれから多くの経験を積んでいくところですが、そうであっても各自のこれまでの経験は、振り返りを通して、きっと皆さんを助けてくれるものとなっていきます。

 賢明に、"wise"であるために、しっかり考えることがまず大切です。2人目の女性、元村有希子さんという方は、毎日新聞の記者で、「カガク力を強くする」(岩波ジュニア新書 2019年)という著書で、ものをしっかり考える力の重要性をあげています。本村有希子001.jpgこの方の「カガク力」では、「カガク」はカタカナで書かれています。この方は、高校生のときには理科や数学が苦手で嫌いで、大学にはそれを避けて進学したそうですが、新聞記者になってから科学の分野を担当することになり、苦手だと思っていたものに取り組まざるを得なくなったときに、思いがけず科学のおもしろさを発見したということです。この方の言う「カガク力」とは、「疑う力、論理的に考える力、おかしいと思ったらツッコむ力」だそうです。科学の知識をたくさん知っていることではなく、ものの考え方であり、疑って、調べ、考え、判断する力だそうです。これは、つまり、自分の頭でしっかり考えるということです。このような考え方をするときに、賢明さは生まれるものです。"Critical thinking"とはこのような考え方です。また、多くの人がなんとなくこうだろうとあいまいに考えているときに、本当にそうなのかなと言えること、つまり、その場の空気を読まない発言ができる能力でもあると言っています。これはおもしろい発想です。流されず、しっかり考えることは、確かにこのようであるかもしれません。そして、これは "creative"であることにつながります。

 "creative"ということを教えてくれる、もう一人の女性を紹介します。「わたしが障害者じゃなくなる日」(旬報社 2019年)を著された海老原宏美さんです。海老原宏美001.jpgこの方は車いすで生活され、人工呼吸器をつけておられ、24時間介護者の手を借りなければ何もできません。著書の中にこのように書いています。「わたしは重度障害者と呼ばれています。重い、障害のある、人。確かにそうかもしれません。でもね、じつは、わたしに障害があるのは、あなたのせいなのです。そう言ったら、おどろきますか?それはそうだよね。あなたはきっとわたしのことを知らない。わたしもあなたのことを知らない、なのに、自分のせいだなんて。でもね、本当にそうかもしれないんだよ。わたしが病気であることと、『障害がある』ことは、別のこと。わたしの生きづらさをつくりだしているのは、この世の中、この社会なのです。」この方は「障害」ということについて、私たちのものの見方をゆさぶります。病気と障害は別、病気の人を障害者というのは社会のものの見方、私を障害者と決めつけないで、と私たちに問いを投げかけ、発想の転換を求めています。考えてみましょう。たとえば、車いすの人は設備の関係上お断りしますという場所があったとしたら、それは障害のある人を不適格としているという考え方とも言えるでしょう。しかし、海老原さんは、車いすの人が利用できない建物の方が不適格、だから、障害者を排除するのではなく、建物やその場所になる不便さを改善しましょう、と考えます。この方は多くの人が気づかないうちに当然と思い込んでしまっている考え方から自由になり、"creative"にものごとを見ることの大切さを教えてくれます。とても自由な発想のできる方です。障害を持ちながら生きることは不便だとしても、不幸ではないと言っています。ほんものの幸せ、ほんとうに大事なことは何かと私たちに考えさせてくれます。

 私たちも自由な発想をもって、"creative"に生きていきたいものです。もうすぐ予定されている「みこころ祭」は、私たちに賢明に考えること、"creative"な発想でアクションを起こすことを求めています。協力して進んでいきましょう。一人ではできないことでも、心を一つにして協力するときには良いものを生み出すことができるでしょう。

 朗読された聖書の「知恵の書」7章22節から26節では、知恵は軽やかで、明るく、本当に良いもので、神様と共にあり、良いことを成し遂げる力であって、悪に打ち負かされることがないとされています。後期の生活が神様の知恵に満ちて、明るいものとなるように願いましょう。皆さんの心に神様の知恵があるように祈ります。

このページのトップへ
このページのトップへ