校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

9月2日 中高等科 始業の集会

2019.09.02

今年度はソフィア・バラホールの改修中のため、全校集会に代えて放送によることとなりました。生徒は各ホームルームで聞きました。学校中が静けさと活気に満ちた時となりました。

~~ 生徒への話 ~~

今日は集会を行う代わりに放送による話ですので、皆さんの顔を見ずに話さなければならないことを残念に感じています。いつもは、舞台の上からではあっても、全体を見渡し、皆さんの姿を見て、その場の雰囲気を感じながら話しています。そのことを今回は改めてとても大事なことと感じています。皆さんの姿を見渡しながら、聞いてくれているようだとか、眠ってしまっている人がいるようだ、では私の話はどのようであろうかなどと、いつもは考えながら話しています。今回は、教室で聞いてくださっている皆さんの姿を想像しながら話します。

夏の便りをたくさんの方からいただきました。返事をしませんでしたが、とてもうれしく読みました。ありがとうございました。7月の学年行事のことに始まり、旅行や部活、色々な体験のことが書かれていました。特に、今年は海外体験学習・語学研修は8ヵ国にわたって活動が実施されましたし、SOFISやワークキャンプもありましたから色々な話題がありました。報告会を楽しみにしています。

ボランティアや職業体験でも様々なことを学んだ人がいます。SDGsについても世の中での色々な取り組みに気づいたことが書かれていました。いのちについて考えた人も多かったと感じました。特に、11年生は長崎での被爆者の話、12年生は黙想会、カンボジア体験学習がいのちについて考える学びの機会だったでしょう。

様々なことがあった夏休みですが、この夏皆さんの心に一番残ったことは何でしたか?心に残っている言葉はありますか?

私には、一冊の本が特に心に残っています。「非・バランス」というタイトルです。作者は魚住直子。この本は学校の図書館にもあります。「非」は、非常口、非日常の「非」です。ですから、「非・バランス」とは、バランスが取れていない状態を指しています。通常はバランスがとれていることを望ましいとしていますから、「非」であるとは良くない状態です。主人公は中2の女子。色々なことがあって、一人でがんばって生きています。ある時、願いごとを言ったらかなうという場面に突然に出遭ってしまい、とっさに口から出てきたのは「助けて」という言葉でした。そのような場面を期待しても、信じてもいなかったし、なぜそう言ったか自分でもわかりません。しかし、そこから一人の人との関わりが始まって、主人公の生活は少しずつ変化していきます。だんだんと自分の心の底に「助けて」という叫びがあったことに気づいていきます。「助けて」という言葉は、自分一人では達成できることがらではなく、誰かと一緒にいて成り立つことを想定しています。「助けて」という言葉は主人公の心の深いところにあった言葉でした。自分では気づきたくない言葉だったかもしれませんが、自分の中にあった言葉でした。「助けてほしい」というのはとてもバランスの悪い状況です。でも、そこから抜け出ることができる。自分の心に正直になっていい、たとえバランスが悪くたって大丈夫、この本からはそのようなメッセージが伝わってきました。心の中にあることを叫んでごらん、必ず響くよ、まず自分の心に、仲間に、そして神さまに、すぐでなくても必ず。今の自分の状態に素直でいいんだよ。「助けて」なんて最悪。でもそこから何かが始まる、そのような不思議な感じのする本でした。

8月9日は長崎の原爆の日です。原爆は最悪の状況です。8月9日に長崎から発信された平和宣言は、最悪の状況からの叫びと感じます。長崎市長はこの宣言で、人によって作られたものは人の意志によってなくせる、一人にできることは小さい、しかし、決して無力ではない、人と人との関わりを作り、小さな信頼を積み重ねることが国と国との信頼につながる、人の痛みがわかるということは平和の種となる、あきらめずに地道に続けることが小さな私たち一人ひとりにできる大きな役割、と力強く述べられ、これらの言葉が私の心に響きました。皆さんはどのように聞きましたか。確かに、私の存在は小さいかもしれない。しかし、確実に私から始まります。

今日の聖書の朗読では、「光の子」とありました。この光は神さまと共にある明るさ、神さまからいただく光で、神さまの輝きの力を私たちはいただいているということです。このことを心にとめてほしいと思います。一人ひとりの心にこの光があります。そして、光を選ぶ力もあります。神さまは No one left behind.です。

今日から再開する学校生活では、お互いの人間関係、友だちとの関わりを大切にしてほしいと思います。お互いの間に交わす言葉は、お互いを活かし合う言葉としてください。心の底からの言葉は必ず自分の心に、仲間に、神さまに響きます。そして何かを生み出し、育っていきます。すぐにでなくても、必ず。一方、うわべだけの言葉は人を傷つけ、良いものを生み出しません。この区別ができる人になってください。

世の中では、9月の始めは中高生の苦しさが現れてくる時として、大きな心配の時となっています。「助けて」を思い出し、一人ひとりの中の光と輝きを信じましょう。学校が皆さんに力を与える場となるよう、皆さんと一緒に進んでいきたいと思います。

いくつかお知らせをいたします。

今年の11月下旬にフランシスコ教皇が日本を訪問されるということです。来日されたら日本についてどのように感じられるか、何を私たちに話してくださるか楽しみです。これから彼がどのような方かを学び、準備して行きましょう。

2つの悲しいお知らせがあります。すでに知っている方もあることと思いますが、2017年の聖マグダレナ・ソフィアの祝日にお招きした卒業生の喜谷昌代さんが6月に亡くなられました。病気の子どものための「もみじの家」という施設を創立され、私たちにほんもののボランティア精神を教えてくださった偉大な先輩でした。もう一つ、昨年の11月、聖フィリピン・デュシェーンの祝日の講演会にお招きした阿部珠理先生について、今年の3月に亡くなられたことがつい最近わかりました。去年の講演はとてもパワフルでメッセージに満ちていました。ものごとを正しく知ることの重要性や色々な人と共に生きることの意味、文化的多様性など、大事なことをたくさんお聞きしたと感じています。このお二人のために心を込めてお祈りし、講演を思い起こして、教えていただいたことをしっかりと受け継ぎたいと思います。

この秋はどのような学校生活となるでしょうか。学習については、まず期末試験に向けてがんばってください。みこころ祭も間近です。Creativeでwiseに活動しましょう。皆さんの学校生活が、一人ひとりに充実したものとなることを願っています。それぞれに直面すべき課題もあることでしょう。しっかりと正直に向き合うところにほんものが生まれます。光の子として進んでください。

Be creative. Be wise. No one left behind.

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