校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

カンボジア体験学習 第7日目 7月28日

2019.07.29

最後の朝を名残惜しい気持ちを持ちながら迎えました。夕刻の出国に備えてスーツケースも朝のうちに整えて、見学に出発しました。

最初の見学先はシェムリアップの地雷博物館でした。創設者アキ・ラ氏はポル・ポト時代に自らが少年兵として地雷埋設に関わったという経歴の持ち主です。カンボジア解放後は各地での地雷除去活動に地道に携わってこられました。博物館には撤去した多数の地雷が展示されており、地雷の現実を伝える場となっています。幸運なことにたまたまアキ・ラ氏がおられて、ご本人から詳しく説明いただく機会を得ました。少年兵としての自分の行動が多くの人の生命を奪う結果になったことを深く受け止め、新たな時代に自分のできることで平和に貢献しようとの思いから地雷除去活動を続けられていることを、シンプルながらも日本語で話してくださいました。生徒たちは質問の機会にも恵まれ、アキ・ラ氏の深い思いに接することができました。過去の出来事に責任をもって直面しない例も多い現実ですが、選択の自由が許されない時代のことであったとは言え、アキ・ラ氏は自分の過去から逃げない姿勢を貫こうと努めている方であると感じさせられました。選択することができる今、何をすべきか厳しく自分に問いかけ続けながら生きることの重要さを教えてくださいました。体験学習最終日に、再びポル・ポト時代の厳しい現実を思い起こしました。

地雷博物館はシェムリアップの近郊、市街地を越えて広がる農村地帯に位置しています。バスの車窓から、幹線道路沿いに少しずつ開発が進んでいることが見えました。また、例年なら見渡す限りに水田が広がっていたはずのところも、今年は水枯れが目立ち、地面は茶色く干上がっていました。今後も降雨によっては不作が心配されます。

本日の活動のメインはアンコールクラウ村の訪問と子どもたちとの交流でした。アンコールクラウ村は、チアさんが25年にわたって支援を続けてきた村です。遺跡修復の仕事を始めたときに、作業員の多くがこの村の出身であったことから縁が始まったとのことです。道路や橋の整備から始め、村の子どもたちの教育環境作りにも力を入れてこられました。25年前に村の人たちと協力して造った橋も今やかけ替え工事の時を迎え、チアさんは感慨深い思いをお持ちのようでした。村に電線が敷設されて電気が利用できるようになったのがやっと2年前。見学させていただいた村の人たちの家では、生活用水は井戸から汲み、庭先で焚火をして炊事をしています。村には高床式の伝統的な家もまだ見られましたが、レンガやコンクリート造りの新しい家も目立ちました。まっすぐな赤土の道が村を通っています。チアさんの農園まで歩いていきました。木立をわたる風に涼みながら昼食をいただきました。チアさんとの別れを惜しむ気持ちで、生徒たちはいろいろと質問し、話を聞いていました。

村の子どもたちが交流を楽しみにして、コミュニティセンターに集まってきてくれました。用意してきた3匹のコブタ人形劇と歌を披露し、喜んでもらいました。子どもたちは幼稚園児から中学生くらいまでで、大縄やビーチボール、シャボン玉遊びや折り紙など思い思いに遊びました。暑くても芝の上で元気に走りまわりました。言葉はほとんど通じていないのですが、身振りなどで、とにかく遊びためのコミュニケーションは何とかなるものです。村の子どもたち、聖心生の双方に笑顔があふれました。夕立になりそうなところで遊びは終了。子どもたちにはおやつが配られて解散となりました。私たちはカンボジアでの最後の活動を終えて、バスに乗り込みました。そして最後の夕食の席では、チアさんや色々なマネージメントで支えてくださった奥様の小出さん、ガイドのタウリンさん、添乗員の小野さんにも感謝を伝えました。

生徒の最終のふり返りは空港で搭乗待ちのロビーで、円になり、立ったままで行うことになりましたが、一人ひとりが自分の大切にしたい思いを熱く語りました。

多くの出会いに恵まれたこの体験学習は、生徒の知性と心に大きな学びをもたらす機会となりました。目にした風景、耳にした言葉、接することのできた人の生き方、日本とは異なる様々な現実、これらの一つひとつが参加した生徒の中で今後さらに深められ、意味づけられていくことでしょう。多くの方の協力と支えにより体験学習を終えることができることに感謝いたします。

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