校長室ブログ - Spirit of "Mikokoro" -

サードステージ始業式 4月8日「Be wise. Be creative. 自ら考える。工夫してアクションをおこす。」

2019.04.12

 サードステージ始業式は10年生の高等科入学式も合わせて聖堂で行いました。そして、今年度は始業式に続けて新年度の始業ミサも聖堂で行いました。例年は、中高等科6学年がソフィア・バラホールで一同に会して始業ミサを行っていますが、今年度は改修工事によりソフィア・バラホールが使用できないために、サードステージ4学年でミサを行いました。7・8年生は9日にミサを行いました。

 今年度の目標は「Be wise. Be creative. 自ら考える。工夫してアクションをおこす。」としました。全校で同じ目標のもとに進みますが、サードステージ生には特に理解を深め、それぞれが力を伸ばすことを期待して、3人の注目すべき女性を紹介しながら話しました。

 **~~生徒への話~~**

 10年生の皆さん、高等科入学おめでとうございます。9年生の皆さん、サードステージへの進級おめでとうございます。11年、12年の皆さんもそれぞれ進級おめでとうございます。

 今年は桜の開花は早かったですが、今日まで新学年の始まりを待ってくれたようです。今日は雨になりましたが、桜の美しさと共に新学年を始められるのはうれしいことです。

CIMG4963.jpg

 10年生は高等科課程という新しい段階に入りました。義務教育を終えて、自分らしい学びを深める時となりました。新しい気持ちで学習にも、学校生活にも取り組んでください。皆さんの前には様々な可能性があります。自らチャレンジしてそれらを開いていってほしいと思います。

 9年生は中等科の最上級学年となりました。リーダーシップが求められます。そして、サードステージ生として、それぞれが自分の生き方を考えるライフデザインの取り組みも始ります。皆さんがどのように新たな自分を発見されるか楽しみに思います。

 今朝は7年生を中等科に迎える入学式もこの聖堂で行いました。2019年度は、皆さんと一緒に、クリエイティブな年にしたいと思います。皆さんにお知らせしてきたように、ソフィア・バラホールの改修が始まります。いつもの年とは異なることがたくさんあります。その時に、前向きに考える、クリエイティブな発想をもって、今までにない、新しく、素敵なことを生み出していきたいと思います。

 そこで、今年度の目標は、「Be wise. Be creative. 自ら考える。工夫してアクションをおこす。」とします。Wiseとはどのようなことでしょう。単語の意味は、賢い、賢明、ということです。さて、critical thinkingという言葉が、このごろよく聞かれるようになりました。批判的思考ということです。では、これの意味するところは、どのようなことでしょう。批判的精神はものごとを鵜呑みにしません。しかし、何もかも批判して、相手と論争するということでもありません。Critical thinkingは前向き思考です。ものごとを受け止めて、他人事ではなく、自分の頭で考える。時には、「本当にそうかな」という視点で批判することもあるでしょう。誤りを見つけたり、論議を戦わしたりすることもあるでしょう。しかし、それは相手に反対するのではなく、いつも、より良い解決、より正しいこと、真実に向かって共に進んでいくという考え方によるものです。ここに賢明さがあります。皆さんには、今年度目標の"Be wise."を心にとめ、いつでも自分の頭でしっかり考える人になってほしいと思います。そこには、必ずcreativeな発想が生まれるでしょう。そして、工夫してアクションを起こす。ものごとが行き詰ったり、うまく行かないと感じたりするときにこそ、今年度の目標を思い起こして、それぞれが自分らしさを深め、学校全体も活気づくようでありたいと思います。CIMG4979.jpg

 春休みの間に3月23日、24日に世界女性会議が東京で開かれました。この会議は世界各国からスピーカーを招いて、女性をとりまく課題、未来について話し合うものでした。女性の活躍が様々な場で期待されています。マララ・ユスフザイさんも招かれて、女子の教育の重要性について発言していました。気づいた人もいることでしょう。マララさんのお父さんも一緒に来日し、日本の男女格差の現実に驚いたという発言をしていました。男女の賃金に格差があり、育児や家事労働が女性の役割として偏っているという点を挙げていました。皆さんはどう思いますか?

 4月5日には、日本の宇宙探索において重要な成功があり、大きなニュースになりました。JAXAの探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウの探査活動で技術を駆使して困難なプロジェクトを達成したということで、テレビのニュースでプロジェクトチームの喜ぶ様子が写されました。私はそれをわくわくしながら見ていましたが、だんだん何か違和感を感じました。というのは、喜んでいるチームメンバーは男の人たちばかりだと気づいたからです。女性のメンバーを画面に探しましたら、一人だけみつけました。しかし、一人だけでした。なぜ女性が一人しかいないのでしょう?女子が活躍できる場がまだまだたくさんあります。

 私たちは女子として、女性として、それぞれが自分の持っている力を大きく伸ばし、一人ひとり社会でその人らしく活動することを求められています。"Be wise. Be creative."の示すこともそのような姿勢です。

 3人の注目すべき女性をあげたいと思います。一人目はクリスティアナ・フィゲレスです。この方は2016年まで国連の気候変動枠組み条約事務局長を務め、2016年のパリ協定の締結に貢献しました。これは全世界が一致して協定を結んだという画期的なことでした。彼女が2011年にこの仕事を引き受けたときは、全世界が一致するということはとても考えられない状況だったと言います。彼女自身その当時をふり返って、自分でも不可能だと思っていた、そしてパニックに陥ったと言っています。しかし、彼女は気候変動は放置しておいてよい問題でないと気づき、不可能と思うのは自分の気持ち"attitude"であり、事実"fact"ではないと気づいていきます。それ以降、彼女は非常に現実的に、考え方は前向きに、忍耐強く、勇気と希望をもって、まわりの人を信頼し、共に働く姿勢で関わっていきます。私たちはこの方から教えられます。もし、「不可能」と言ってしまえば、そこで終わりになってしまいます。しかし、本当に大事なことなら、何かできることがあると思い直して考え、アクションを起こしていく。まわりの雰囲気に流されず、鵜呑みにせず、"critical"に考える。それが"wise"ということであり、"creative"ということでしょう。この方のスピーチはTEDというサイトで見ることができます。ぜひ見てほしいと思います。勇気づけられます。

 2人目は日本人女性で中満泉という方です。国連で軍縮担当上級代表を勤める国連の事務次長です。現在国連に勤める日本人で最も高い地位にいます。国連の安全保障理事会で4月2日に発言し、核兵器の使用に関し、世界の状況が緊迫していることを訴えています。非常に困難な状況に直面する役割です。そこに日本の女性がいることは注目に値します。彼女は若い時に緒方貞子さんに接したことが大きかったと言っています。この方も、世界の状況を"critical"に考えているに違いありません。そして、不可能と言わず、"creative"に解決を探そうとしています。ぎりぎりのところでアクションしている女性です。CIMG4967.jpg

 最後はスウェーデンの若者グレタ・トゥンベリです。この方については、10年生の皆さんには3月の中等科卒業式で触れました。グレタは高校生ですが、気候変動に関し、温暖化対策を今すぐ具体的に進めるべきとして昨年の暮れから、学校でストライキを起こしてデモ活動を組織し、大人に対して訴えています。この活動がどんどん広がっています。グレタは温暖化対策は先延ばしにできない、という強い意識を持っています。高校生であってもアクションを起こし、世界に対して大きな影響力を発しています。彼女も"Be wise. Be creative."の精神を生きています。

 昨年度私たちはSDGsについて意識を深めました。今年度は具体的なアクションに向かう時です。皆さんも学校の中で、SDGsに関し具体的にできることを見つけてほしいと思います。できることはたくさんあるはずです。たとえば、私たちの学校はこれまで自動販売機でPETボトルの販売をしていません。飲み物は自分のボトルに入れて持ってきます。このあり方は、以前にも増して意味あるものとなりました。PETボトルは便利ですが、使い捨てプラスティックが問題になっている今、私たちは先輩たちが始めてくれたことの意味を再発見して、大事に受け継いでいきたいと思います。そして、私たちにできる新たなアクションをみつけましょう。

 今年の5月の聖マグダレナ・ソフィアの祝日行事には以前NHKでキャスターを務められ、SDGsについて活動されている国谷裕子さんを招いて講演していただくことになっています。先ほど紹介した1人目の女性クリスティアナ・フィゲレスとの対談記事も新聞に出ていました。SDGsの目標年は2030年です。11年後の2030年を生きるのは、皆さんです。皆さんはどのような世界、どのような地球になっていてほしいと思いますか。それを作るのは皆さんの課題です。学校での学習はテストのためだけでも、進学のためだけでもありません。皆さんが真に"wise"に"creative"にアクションを起こせる人になるためのものです。そのことも考えて、今年の学校生活に取り組みましょう。学習においても、委員会や行事などにおいても、仲間とのかかわりづくりにおいても、部活動においても、皆さんが楽しく大いに学び、実り多いことを期待しています。

 今年度もグローバルな活動が予定されています。7月の後半には台湾の聖心の生徒が本校を訪問します。ちょうど研修旅行などの時期にあたりますので、10年生の皆さんが出会います。聖心のネットワークの中で世界に目を向けていきたいと思います。また、今年は学校創立111年にあたります。1が3つ並ぶ年になりました。学校は新たな段階に入ります。校庭の木も変化しています。ピロティから本館に向かう通路にあった大きなヒマラヤスギは昨年の夏から少しずつ枯れてきてしまいましたので、このたび伐らなければなりませんでした。この春は校庭の何本もの大きな木の手入れも行いました。そのように学校は変化しながら歴史をつなげていきます。2008年に100周年を祝って記念誌を作成しました。そのときに、将来の生徒にも読んでもらえるように部数を多く用意しておきました。学校創立111年目の今年は、歴史をふり返り、新たに進むのにふさわしい時となりました。皆さんに100年誌を1冊ずつお配りします。この学校の歩みをもう一度心に刻んで、新たに進んでいきたいと思います。

 始業式に続くミサにおいて、第一朗読ではヤコブの手紙1章が読まれます。試練があるときに、神さまの恵みもあることが語られます。そして、福音朗読では、マルコによる福音書7章からフェニキア人の女性がイエスと出会い、簡単にあきらめずにイエスと問答して、イエスを動かしていくエピソードが読まれます。"Wise"で"creative"な女性の心をまっすぐ受け止めてくださるイエスの姿があります。これらの聖書の言葉に導かれて、この1年間進んでいきましょう。

 4月21日にはイエスのご復活、イースターの祝日が巡ってきます。それまでの期間、神さまからいただいた命を生きる意味を味わい、イエスにまっすぐに向かう心をいただけるよう祈りながら過ごしたいと思います。

CIMG4966.jpg

このページのトップへ
このページのトップへ